*銀魂*

□ノットファンド
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「好きですよ 旦那」
「・・・・へ?」

決死の覚悟でというわけではない。
ただ、暇つぶしのように紡いだ告白だから
上等な返事を期待していたわけではないけれど
あまりに腑抜けた音が返って来たので可笑しくなってクツクツと笑った。

「大人をからかうんじゃありません」

口元だけで怒ったような素振りを見せるが、いつも通り単調で
抑揚のないしゃべり方が、こんな時でも一寸の狂いもなく坂田銀時である事が益々可笑しい。
けれど、それ程自分の言葉の威力が弱かったと言う事かと腹の底だけで溜息をついた。

「ちったぁ動揺してくだせぇよ」
「これが動揺してないように見える?」
「見えます」
「嫌だなァ、してるって。ほら、読んでたジャンプ閉じちゃったもん」

確か浦原が出てきた所で・・・と口先で喋り乍らパラパラとジャンプを広げる
その行為全てが、先ほどの言葉を丸ごと嘘だと裏付けているのに彼は気づいているのだろうか。
気がついているのだとすれば残酷だし、そうでないとしても残酷だ、と
銀時の指にはじかれて風を生む鈍い色のコミック紙を見つめながら思うが
もし銀時がまともな受け答えをしたとするなら、霧の中を彷徨うような
モヤモヤとして気持ちの悪い感情に、分かりやすい名前がついてしまっていただろうと思うと
そうならなかった事を喜ぶように安堵の溜息をついた。
「あのさぁ 沖田君」

ジャンプに視線を落としたまま呼ぶ銀時の声が
どこかいつもと違うニュアンスを持って名を紡ぐので
思わず姿勢を正し、「はい」と短く返事をして息をのむ。


「もし仮に。仮にだよ?あくまでも仮になんだけどさ」



もし俺がイイって言ったらどうするつもりだったの。
そういう銀時の言葉を理解するまでに暫くかかり
失ってしまった言葉を取り戻す頃には、すっかり忘れられたジャンプが部屋の隅に転げていた



END



なんとなく相思相愛っぽい感じがよかったんだけどなぁ・・・

2008/06/26

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