*銀魂*

□曇天
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まだ、昼も真中だというのに。
町は勢いよく質量を増した灰色の雲に覆われ、
薄暗い曇天にまるごとくるまれていた。

雨、と呼ぶにはまだ頼りない粒が、銀時の肩にぶつかって跳ね上がり、
「一雨きそうだ」と言って困ったように遠くの空を見上げた。
その顔が、何かに怯える少女のようだったので
「どうかしやしたか?」と、その所為を尋ねる。

「雨が好きなやつなんて、女子供くれぇだろ」

コチトラお天道様のが気分がいいってだけだ、と
はぐらかす様に笑顔を作るのは、自分の事を話したがらない銀時の
得意な笑顔だったが、その顔が時々酷く寂しそうに見えるので
銀灰色の癖毛に手櫛を入れてやってから、此方もわざとらしく笑顔を作る。

「雨が振ると、くりんくりんが3倍ですからねぇ、旦那の髪は」
「天パを笑うやつは天パに泣くと学校で教わらなかったか」
「俺ぁ、生まれも育ちも道場でぇ。寺子屋には行ってやせんから」
「だったら覚えておくんだな」

言いながら、少女のような頼りない表情も
孤独感を煽る寂しげな表情も、いつもの眠たげで無気力な顔の下に隠れた。
それを喜ばしいとは思わないし、安堵の類も生まれては来ないけれど、
誰にでも隠したい事のひとつ位はあるものだ、と詮索せずに見守る事を
銀時に出会ってから覚え、虚しさや儚さも同時に知った。
無論、踏み越えたいと願うわけではないのだけれど。
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