交想曲・短編

□御題小説・1
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パタパタパタ。

屋上へ続くただ一つの階段を、一人の女生徒が軽快なリズムで上って行く。
生まれつきの茶色い髪が、一段上るごとにふわふわとなびいた。

ゴールである最上段に両足を置いて目の前の扉を開けば、心地よい風が頬を掠め、春の澄んだ青空と共に、それとは逆の赤い髪が視界に入った。
恵は横になっている彼の姿を確認し、困ったように笑いながら近付いた。


「涼君、起きてる?」


涼、と呼ばれた青年はその声にむくりと起き上がり、目線を声の方へ向ける。
だがその目はまだ眠そうで、そんな彼の様子に恵はクスリと笑みを溢し、静かに彼の横に屈み込んだ。


「次は音楽の授業だよ?涼君も出るでしょ?」


目線を合わせ、顔を覗き込む。
涼はあぁ、と肯定し、だがやはり眠いのか片手で額を押さえた。


「涼君?」


恵の声が再び響く。
わかってる、と言いたい涼だったが、体は睡眠を求めているようで言うことを聞かない。

今日はサボってしまおうか。
…どうせなら、こいつも一緒に。


「…少しだけ、いいか」


そう思った涼はチラリと恵を見て、小さく言葉を投げ掛けた。
それを聞いた恵は目を丸くし、頬を微かに赤く染める。

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