交想曲・短編
□御題小説・1
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「チャイムが鳴ったら行くからね?」
「ん…」
恵は、涼のワックスでパリパリの髪をいじりながら話しかける。
この時間が一番心地よい。
お互いにそう感じていた時、チャイムの音が響いた。
あ、と名残惜しそうな声が恵の口から溢れる。
「…じゃあ、行こっか」
ポンポンと涼の肩を叩き、横顔を見つめる。
と、不意に彼の手が恵の腕を掴んだ。
恵は驚いて肩を跳ねさせる。
絡み合う視線。
そのまま、涼が静かに口を開いた。
「まだ、このままが良いんだけど」
(そう見つめられたら、断ることなんかできなくて、)(黙って頷いたわたしを見て満足気に笑うあなたは、まるで子供のようだった)(…サボりなんて、生まれて初めてだよ)
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