短編〜他〜
□女の子がよかった
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『なんでいつもこうなるのー!』
女の子がよかった
私と彼しかいないこの空間でだらーんと目の前にあるテーブルにうなだれた。今は皆が部活も夕食も食べ終え、仲間で遊んだり、部屋で勉強したり、所謂個人が好きに使っていい時間だ。恐らく私の目の前にいる彼も自分のために時間を使いたくて仕方がないだろう。しかし、彼が夕食を食べ終わるのをわざわざ待って、出て行くところを引き止めたのだ。今いるところは男女共用で使うことができるスペース。寮生活であるこの学校で学校生活以外で唯一男女が一緒に使えるスペースだ。
「もうそろそろだとは思っていましたが、で今回はなんてフラれたのですか」
『フラれた前提で話を進めますか』
「フラれたんでしょう?」
『まぁ、そうですけども』
この私の前で口調は丁寧なくせに毒を吐いているのは観月くんである。
彼にはいつも相談にのってもらっている。もちろん、恋愛事に関してもだ。
「はぁ、あれほど今は引いてみる時と言っていたでしょう」
『だって、あの時は』
「だって、ではありませんよ。まったく」
観月くんが立てるシナリオはすごくて、私以外にも相談を受ける事があるらしい。私も彼に相談して叶った時は何回かある。しかし、私の場合はその後だ。どうも突っ走ってしまう事があるらしく、せっかく観月くんが叶えてくれた恋を勝手に終わらせてしまうのだ。だから、私の場合、観月くんは付き合ってからも相談にのってくれたりする。
「まぁ、確かに彼と君はいつかはこのような流れになってしまうとは思っていましたけどね」
『初めから別れると思っていたのか』
この観月くんの刺のある言い方はいつものことでフラれた後に言われると結構心にぐさっとくる。まぁ、後腐れないようにという彼なりの優しさといえば優しさなんだろうけれども、
『なんで優しい言葉をかけたり、優しく抱きしめたり、こう抱擁する感じの慰め方ができないかな』
相談したのは私とは言え、もう少し労わりという言葉を彼は知るべきだと私は思うのだ。
「いつも優しい言葉を言っているつもりですが」
『あら、そうだったんですか』
「それに私が貴方を抱きしめる?そんな有り得ない事をするとお思いですか」
『いや、抱きしめるとまではいかなくていいんだけどさ。観月くんが女の子だったら私を優しく慰めてくれるんだろうなとふと思ったんだよ』
「そうですか。私が女の子だったらですか」
観月くんが女の子だったら、さぞきれいなんだろうな。口はあれだけど、口さえよかったら、優しいし、顔もいいし、頭もいいし、スポーツもできる。礼儀作法もできて、すっごくモテるんだろうな。きっと、彼も…
『観月くんやっぱり男でいて』
「言うと思っていましたよ」
そんな嫌みが混じった笑みも素敵って、女として負けてる気がする。
女の子がよかった
いえいえ、男の子でよかったです。
私をいつも慰めてくれるヒーローは私よりも女として素敵なヒーローでした。
企画[永遠のヒーロー]へ提出
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