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□花
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「ご…ごめんなさい…死んだお母ちゃんの写真で…風で飛んでしまって…ごめんなさい」
大事そうに写真を抱えて少女は何度も近藤に頭を下げて涙を流した。
「謝らなくてもいいさ、お母さんの写真も君も車に轢かれなくてよかった!」
近藤は少女の頭をぽんぽんと撫で、大きな口を開けて笑った。
「でも、飛び出したりしちゃダメだぞ!いいね?」
「はいっ!ありがとうございます」
少女は何度も頭を下げて去って行った。
「うん、よかった」
近藤はにこにこして隊服に着いた土をはらう。
「…よかねーよ、近藤さん。花がめちゃくちゃだ」
土方がぐしゃぐしゃになった胡蝶蘭を近藤に差し出した。
「ああ…こりゃあ…ひどいな」
頭をかきながら近藤は苦笑いをする。
「また、買いましょうや!おい土方金出しやがれ」
「総悟てめっ!!お前も出しやがれ!!」
二人のやり取りに近藤は慌てて間に入る。
「いや、いいんだ!もう!二人共ありがとよ!!ほら、アレだ、柄でもねえ事はすんなっていう何かのアレだよアレ!」
あっはっはと大きな声で笑って、まだ見廻りの残っている二人と別れた。