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□わたしのその先に
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雲ひとつない冬の青空
少し冷たい空気のこの冬の晴れた日が妙はたまらなく好きだ。
青空の中吐く息が白くなる。
けれど不快ではなくなぜか気持ちが良い。
洗濯物を干しながら、いつもの癖で周りをきょろきょろと見回す。
「ゴリラオッケー!」
近藤がいない事にホッとしながらそう確認する様に呟くと、パンパンと良い音を立たせ洗濯物を干していった。
カサカサと庭先で音がする。
洗濯カゴを反射的に掴み、投げる体制を取るが庭先から出てきたのはゴリラではなく一匹の猫。
猫はびっくりして逃げ出して行った。
妙は急に恥ずかしくなり洗濯カゴを地面に置いて青空を見上げて溜息をひとつついた。
「…馬鹿ねえ。なんであの人だなんて思ったんだろ」
「…だいたいっ、いっつも庭とか軒下とかから出てくるからいけないのよっ!!」
無性に腹が立ち
洗濯カゴを蹴った。
何に腹が立つ?
自分に?
近藤に?
いつもいつも、本当のところ妙自身わからないでいた。
死んでしまえばいいのにとまで思える位嫌いだったらきっとこんな気持ちにはならなくて済むのに。けれど数々のストーカー行為にはほとほとまいっているのも本当の気持ちだ。
私のその先にはどんな答えがあるのだろう、そしていつかは出さねばならないその答えは…
ぐるぐると思考が巡り
また妙は洗濯カゴを蹴る。
結局のところ、一日近藤の事ばかり考えている自分に妙はうんざりしながらも
ごく普通に真正面から近藤が来た時は
もしかしたら魔がさしてしまうのではないかと思いながら
また冷たくて暖かい青空を見上げて
先程とは違う色の溜息をついた。
Fin