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□一言は千の言葉
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「お妙さん好きです!!」
この人は性懲りもなく
いつも好きだ好きだ言う
私に鉄拳をくらおうが
踏み潰されようが
いつもいつも。
またいつもの様に
殴りかかろうとしたら
私の拳を近藤さんが片手で止めた。
いとも簡単に
そしてそのまま抱き寄せられる。
「ちょ…何して…」
「…離して下さいっ!」
…彼は何も言わない。
いつもならうざい位に
お妙さんお妙さん言うくせに
そしていったん
抱きしめている手にギュッと力が入る。
そして
「…好きだ…」
一言だけ、低い声で
私の耳元で言う
「…痛いです…離して下さい」
ゆっくり私が言うと
バッ、っと私から離れて
泣きそうな顔で
「すすすみませんんっ!!!」
と
謝る。
そのまま私は彼に拳を
打つ。
遠くに吹き飛ぶ近藤さんを見ていた私の顔は
多分
赤い。
ずるい
あんな形で言われたら
ずるい。
彼のあの一言が
私の中にぐるぐるまわったまま
熱い顔のまま
私は家路に走る
彼に見られない様に