有り難き家宝
□まっすぐな僕ら
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「全く、妙な漢に取り憑かれたもんだ。
神社の一件から世話になり、借りを返すつもりが、結局また貸しを作っちまった。
かといって行くところもないし、コイツんちの剣術で腕が上がったのも確かだ。
門下にいるあのガキも、そして何よりあの漢も底知れぬ強さを感じる。
とりあえず自分を鍛えるにはいいかもしれない。
しばらく居座ってみるか…。
野良猫のように、奴らと距離を置きながらつかず離れず、この道場に身を置くことにした。
【まっすぐな僕ら】
「お前、俺より後輩なんだからボーッとしてねぇで、いろいろ手伝えよ!」
亜麻色の髪のガキはふんぞり返って言い放つ。
気に入らねぇガキだなぁ。
俺は言われた通り、黙々とその仕事をこなした。
薪割りが済み、その薪を運んでいる時、ガキとアイツの話し声が耳に入る。
「なんであんなヤツ、ここに住まわすんだよ、近藤さん!」
「あんなヤツって?あぁ、トシのことか?」
ト…トシィ!?
俺のような狂犬を、そんな愛称で呼ぶヤツは世界広しと言えど、今は亡き親でもありえなかった。
突然のことに動揺する俺に関係なく、会話は続けられる。
「いいじゃねぇか、総悟。お前だって、強い稽古相手欲しかったろ?アイツは強いぜ。それに行く宛無さそうだし、周りの道場からも目ェつけられてるからさァ、うちなら安全だろ?そんな毛嫌いすんなって、根はスゴくイイヤツだぜ。」
…イイヤツ??
な、なに言ってんだ、あの漢は。
俺は顔を紅くしながら、心の中でツッコミを入れた。
「だって…なんか…気に入らねぇんでサァ。」
少年は口を尖らせ、そう言い放つ。
俺だって…気に食わねぇよ。
「ははは…まぁそう言うなって、総悟。俺たちいい友達になれると思うぜ。」
「近藤さん、俺ん時もそんなこと言ってませんでしたかィ?」
それを聞いて、アイツは豪快に笑った。
「アイツ、信用できるんですかィ?近藤さんの人の好さ利用して…。」
「だとしても信じてやれ。」