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□背中
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「お妙さんっ!!奇遇ですね!!」
買い物帰りに出くわしてしまった男に妙は眉を上げて睨みつけた。
「あら、それじゃああなたの奇遇って何度もある奇遇なのね」
近藤はやはりめげずに妙の横でにこにこしたまま嬉しそうな顔をした。
「いや、あの…今日は本当に奇遇で…あっ!今日不逞浪士どもがこの辺で何かやらかすって情報がありまして…お妙さんも気をつけて下さいっ!」
「私なら大丈夫です。あなたの方が何倍も危険だわ」
「あはは…」
近藤が自虐めいた笑いをしたと同時に、低い、明らかに友好的ではない声が後ろから響いた。
「こんなところで女とはしゃいでるたぁ、いい度胸じゃねえか。真撰組局長さんよ」
着流しの、刀に手をかけた攘夷浪士が近藤と妙を睨んだ。
咄嗟に近藤が妙の前に立ち、盾になる。
「お妙さん、このままここから逃げて下さい」
「…嫌です」
背中であまりにもきっぱりと言う妙に近藤は焦っていた。
「ちょ…あ、あのっ本当にここは俺に任せて下さい!お妙さんにもしもの事があったら俺ぁ…」
「私、あなたより強いもの。」
妙は近藤の背中でにこりと笑った。