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□風鈴
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チリーン
近藤は見回り中にガラス細工店の前で足を止めた。
透明なガラスに綺麗な朝顔が着色してある。
なぜか妙に逢いたいと思った。
いや、正確には常に逢いたい逢いたい思ってはいるのだけど
いつものそれとはまた違った、切ない感情。
近藤は風鈴を買い、綺麗に包んでもらい
そのまま屯所に帰った。
ここしばらく妙の家にも、すまいるにも行っていない。
基本近藤はポジティブだ。でも時々思う。
彼女が自分を嫌がってるのは百も承知
でも彼女が大好きだ
大好きでどうして良いのかわからない
ちょっと落ち着いてみようとしばらく自重してみたものの、やはり妙の事を想いこんな物を買ってしまった。
前にいつもの様に妙の家の軒下にいて妙に泣かれたのを思い出す。
「あなたはやり方が間違ってる」
泣きながら言った妙を思い出す
好きだと伝えても気持ちが届かない
「やっぱり、逢いてぇな」
近藤は軽く支度をし、
妙の家に向かう。
いつもと違うのは
チャイムを鳴らしたという事
「はい?どなた?」
妙が門から出て近藤を見、少し面をくらった顔をして
「…間に合ってます」
そう言ったかと思うとくるりと背を向けて家に戻ろうとする。