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□真っ直ぐなひと
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「…あなたって、自分の気持ちだけでいつも行動するのね」

お妙さんが俺を睨んだまま言った。

「私の事を好きだと言うなら私の気持ち、考えた事ある?」


お妙さんの気持ち…?


俺は…
お妙さんの気持ちが知りたくて、知りたくて
だから…

こんな時に限って
上手く言葉が出てこない。

「あのっ…俺ぁ、お妙さんの気持ちが…知りたいですっっ!!」

結局ストレートにそのまま言ってしまう。格好の良い言葉なんてひとつも浮かんでこねぇ。

「私の気持ち?いつも言ってるじゃないですか。…迷惑なんです、って」

「どんなところが、ですか?」

「…そういう、ところよ」

お妙さんはそう言って俺に背を向けて歩き出した。

「あなたって本当、わかってない」
背を向けたまま立ち止まらずにそう一言だけお妙さんが言った。



俺は馬鹿だ。

大好きだと思えば思う程大好きな人を遠ざけてしまう。
うなだれて、隊服に着いた玉葱の皮をはらってる自分が情けねぇ



「来るなら真っ正面から来なさいよ!!それが武士ってもんじゃないの!?」

遠くからお妙さんが叫ぶ。

ああ…やっぱり俺は格好悪ぃ。

「はいいっ!!近藤勲、真っ直ぐに貴女に…!」

「来ても、殴るけど!!」

俺の言葉を遮る様にお妙さんはまた叫んで駆け出して行ってしまった。

今のを、正面から来て!などと受け取っちまう俺はやっぱり女心がわかっないんだろうか。

色んな女にフラれてきたけれど、俺がお妙さんだけは諦められないのは

きっと

貴女が世界一素直じゃなくて

真っ直ぐなひとだからだと思うんだ。



Fin
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