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□回り道
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妙の家とは少し遠回りな道を歩いている事に近藤は気が付いた。
「あの、お妙さん?」
きょろきょろと近藤は辺りを見渡した。
「いつも、回り道して帰るんです」
妙は星空を見上げて振り返らずに言った。
「危ないなあ…痴漢にでもあったらどうするんですかっ!」
「私が痴漢なんかに負けると思う?」
そう言ったと同時に振り返った妙の手が近藤の頬に素早く飛んできた。
「いや、あのっ!!思いませんんっ!!」
殴られるかと思い、目をつむり手でガードをしながら近藤は慌てて言ったが
自分の頬がほんのりと温かい事に気が付いて目をそっと開けた。
妙が近藤の頬に缶コーヒーを当てて微笑む。
「馬鹿ね。すっからかんになるまで飲んだりして。」
近藤は思わぬ妙の行動に固まり、そのまま動けずに妙を見た。
「私やっぱりこれ、いらないんで。飲んで下さいな」
近藤は固まったまま、妙の手から缶コーヒーを受け取り顔を赤くしてその場に立ち尽くしていた。
「もうすぐ家なんで。ここでいいです、さようなら」
近藤に背を向けた妙に
慌てて近藤は叫ぶように言った
「お妙さんっ!!」
妙は何も言わずに歩いて行く。
近藤もそれ以上は何も言わずにずっと妙の後ろ姿を見送った。
「回り道、か…」
「俺は何回…回り道したらお妙さんに振り返ってもらえるのかな」
手の中の
すでに冷めている缶コーヒーが
温かくて近藤は泣きそうになる。
大好きなひとをおもいながら
Fin