main3

□女心に桜空
2ページ/3ページ

「今年は、聞かないのね」

「えっ??」

妙のいきなりの問い掛けに、近藤は慌てて頭を掻いた。


「どうして誘ったのか、って」
妙が眩しそうな顔で桜の木を見上げた。

「それ、聞いたらお妙さん帰っちまう」

妙の隣に並んで近藤も桜の木を見上げた。
その顔を妙の顔へと視線をうつし、小さく笑った。

「そうね」
妙はくすくすと笑いながら近藤に背を向けるとまた歩き出す。

「このままずっと散らないといいのにって、子供の頃は思ってた」

歩きながら、振り返らずに妙が言った。

「そうですね…俺なんかぁ今でもそう思っちゃいます」

また少し妙の後ろを近藤は歩く。

「私より大人なのに」
妙はそう言って吹き出した。

「今は散って、また咲いて…それが良いって思えるんです」

妙はまた立ち止まった。

「今見てる桜は今だけのものでしょう?」


衝動

本当に衝動だった。
帰られてしまうよりも
もっと遠い何処かに妙が行ってしまいそうな気がして

近藤は思わず妙を抱きしめた。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ