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□女心に桜空
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「今年は、聞かないのね」
「えっ??」
妙のいきなりの問い掛けに、近藤は慌てて頭を掻いた。
「どうして誘ったのか、って」
妙が眩しそうな顔で桜の木を見上げた。
「それ、聞いたらお妙さん帰っちまう」
妙の隣に並んで近藤も桜の木を見上げた。
その顔を妙の顔へと視線をうつし、小さく笑った。
「そうね」
妙はくすくすと笑いながら近藤に背を向けるとまた歩き出す。
「このままずっと散らないといいのにって、子供の頃は思ってた」
歩きながら、振り返らずに妙が言った。
「そうですね…俺なんかぁ今でもそう思っちゃいます」
また少し妙の後ろを近藤は歩く。
「私より大人なのに」
妙はそう言って吹き出した。
「今は散って、また咲いて…それが良いって思えるんです」
妙はまた立ち止まった。
「今見てる桜は今だけのものでしょう?」
衝動
本当に衝動だった。
帰られてしまうよりも
もっと遠い何処かに妙が行ってしまいそうな気がして
近藤は思わず妙を抱きしめた。