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□弱っていると甘くなる
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「…ホントにあなたって…」
呆れた妙が咳込むと
アイスの袋を抱えたまま近藤が部屋に慌てて上がる。
いつもなら部屋前で吹っ飛ばされるのに
妙があまりにも大人しいので慌てて妙の前に来た近藤自身が面をくらったほどだ。
「ぶん殴る気力もないの。だからアイス冷蔵庫入れたら帰って下さいな」
ちらりと近藤を見て妙はまた視線を天井に戻す。
「…お妙さん、あなたがこんな時に来たのが自分で…すみません…」
大人の図体のでかい
いかつい男が
正座をして謝っている事にみょうにツボに入って
笑ってしまう。
「おおお妙さん?」
風邪のせいで
思考がきっと弱ってるんだ
妙は何度もそう心で納得させる
なぜなら
いつもならうざったい近藤の「お妙さん」が
すごく心地好い。
屋敷に一人になるとさすがに心細い
なぜだかわからないけれど
近藤の声が心細さを和らげてくれている
「…ストーカーもたまには役に立つのね」
やっぱり素直にはなれないけれど
ほんの少しだけ妙の言葉に心の揺れが出る。