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□俺の相棒*
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「ただいまー…。」

ドアを開けると母、温子が笑顔で迎えてくれた。

「おかえりー、遅かったわね。ご飯、もうすぐだからね。」

「うん…。」

「どうしたの?テンション低いじゃないの。」

「ちょっと色々あってさ。」

そう言って理由を隠し、自分の部屋に入っていった。

「豪炎寺…。」

円堂と豪炎寺が出逢ってから、何ヶ月がが経つだろうか。

(こんなに一緒にいるのに…。)

(こんなに…好きなのに……。)

円堂の瞳には、大粒の涙が溢れていた。

今にも涙が流れそうな瞬間、携帯が鳴った。

ピリリリリリリッ

涙目になりながら携帯を確認すると

【着信 豪炎寺】

(豪炎寺から電話…?)

「もしもし…。」

「円堂、今すぐ会えるか?」

「え…っ?」

時計は9時を過ぎていた。

おそらく、中学生が出歩く時刻ではないだろう。

「夜遅いから無理ならいいんだ。」

円堂は対応の仕方がよく分からなかったが、決心した。

「…く。」

「?」

「俺、行くよ。」

「ありがとう、じゃあ河川敷で待ってる。」

電話の向こう側の豪炎寺は笑っているように思えた。

…――プツッ…。

電話が切られた後はとても静かだった。

なんだかとても空恐ろしいほどに。

「母ちゃん、俺ちょっと用が出来たから行ってくる」

「え、ちょっ!待ちなさい守!」

温子の命令も無視して、円堂は自転車にまたがり、ペダルをこぎ始めた。

走る。
走る。走る。
走る。走る。走る。

とにかく走った。

豪炎寺に会うために…。
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