大振りshort

□星屑レインドロップ
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星屑れいんどろっぷ

窓ガラスに当たって雫が跳ねる
──ぴしゃん。
雲から落ちてきた最初の一滴を合図に、しとしとと。
次第に激しい雨が降り出した
ほんの一瞬、目を離した瞬間、天気は移り変わっていた
どんどん運動場を水浸しにしていく光景を見てクラス内の一人が絶叫する

「うわぁあああ!!!!雨ぇぇええ!!!」
「ざざ降りだな・・・」
「ぅ、わぁ」

窓の外に絶望の眼差しを送るのは同じクラスの野球部員
周りのものも傘を忘れただの、髪が跳ねるだの騒いでいる
自分も濡れるのは嫌だし無駄に疲れるし、雨は正直嫌いだった
でも最近は違う。
この雨模様のときの匂いがたまらなく好きになった



梅雨が明ければ野球部には一大イベントがある。
そのため早朝から夜遅くまでそうとう練習している
そして雨が降れば、廊下を一階から四階まで走り回ったり
腹筋、腕立て、スクワット・・・・etc
グラウンドだけが彼らの練習じゃない
何で私が雨の日が好きかというのは教室からでも彼の顔を拝むことが出来るから
第二グラウンドまで足を運び練習を見る勇気は私にはない。
恥ずかしくてそこまで行けない意気地なし
でもそんな私でも雨の日だけは、すぐ傍で頑張ってるのを見れるでしょ?

「やっぱり田島くん、速いなぁ・・・・」

うわ、見かけによらず三橋くんも!
やっぱりピッチャーだもんねぇ
残って勉強しているフリをしつつ、目線は野球部。
でも決してバレてじゃいけない!!
そんなスリリングな状態でも私は楽しかった
友達に言ったら馬鹿にされたけど・・・

「なぁ、あんたいつも居るよな」
「・・・・・・・・え、」

急に声をかけられて相手の顔をまじまじと見る
そう。私が見てるのは野球部だけど野球部じゃない
野球部の中の、阿部隆也くんだ

「あ、っべ・・・・・くん!?」
「何?俺のこと知ってんだ?」

ニヤっと笑って白い歯を覗かせる
そんな表情にドキッとくる

「野球好きなら今度見に来いよ」
「えぇっ!?そんなっ、迷惑でしょ?」
「そんなことねぇよ」

顔に熱が集まる
絶対真っ赤だ!!
阿部くんは私のこと知ってたの!?
何で!?
あああ!!自惚れちゃだめよっ!思っちゃ駄目!!
浮かんでくる疑問に妄想めいた答え。
それを必死に掻き消す

「それじゃ俺、練習戻るから。ぜってぇ見に来いよ!!」

手を振って去っていく阿部くんに私は頷くことしか出来なかった

(阿部くんは私に気づいてた!!)

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