オリジナル
□君に心を捕まれた
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ふわっと風がカーテンを揺らす。
その様子はまるでオレンジ色のオーロラの様。
今日は学校生活の三年間の中でとても大切な日。
でもそんな日の前日に限って遠足前の小学生のようにドキドキしてソワソワして結局、目が冴えてしまってなかなか眠れなかったりする。
俺はそんな奴の1人で。
式が終わった今、思い出に浸りながらうたた寝をしているところだ。
「また寝てるの?」
急に声を掛けられ俺は飛び起きる。
その拍子に手で持っていた(いや、掴んでいたの方が正しい)筒を落としてしまった。
カコン、と音を立てて声の主の方へと転がっていく。
「…気を付けないとダメでしょ」
例の人にそう言ってハイ、と渡される。
取り合えず取ってくれてありがとうと例を言っておく。
俺は定まらない視点と寝起きで上手く回らない頭を頑張って働かせる。
「…あぁ、隣の席の」
俺がそう言うと少し寂しそうに彼女は笑う。
そう言うの貴方らしい、と言われ何とも言えない気分になる。
ここは謝るべきなのか、お礼を言うべきなのか。
「…はぁ、…ありがとうございます?」
お礼を言った俺に笑いを堪えてそういう所が好きなんだと言う彼女。
どんな意味であれ嬉しいことには変わりない。
そんなに話した事は無かったけど凄く良いやつだった。
そんな彼女とも今日でお別れ。
そう思うと少し寂しくなるのは彼女の気持ちを知ってしまったからなのだろうか。
「…嫌いじゃ無かった、お前のこと」
最後にそう言うと彼女は一段と笑顔になって。
その笑顔を眩しいと思ってしまう俺はきっと。
『君に心を捕まれた』
end.