日常的な志摩くんと私

□彼の以外な一面
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「…葵さん」



志摩くんが強張った顔をして私の名前を呼ぶ。

いつもなら彼の呼び掛けには必ず彼の方を向いて答えているが今はそんな余裕は無かった。



『…何でしょう』

「何でしょうや無い、どないしてこないな事になっとるのかと聞いとるんですわ」



彼はそう言って目の前に起こっている対象を指す。



『……』

「…アカン…アカンて」



志摩くんは目の前にいる“奴”を見ながらアカンアカンと口にしている。

彼にとっては黒い光沢の背中でカサカサいいながら動く“奴”は『アカン』らしい。



事の始まりは数分前に遡る。





部屋の外でカサカサ動く例の奴“ゴキさん”を見つけ、頼りになりそうな志摩くんを呼んだのが始まり。


『志摩くん、退治して欲しい奴がいるんだけど』


そう言って呼び出せば“すぐ行きますわ”と一言いってすぐに来てくれた彼。

と、そこまでは良かったのだが――。



「うん、これは僕にはどうしようもありませんなぁ」


そう言った彼の目は“奴”を嫌う私と同じような目をしていた。


『…あ』


…ブーン


奴が飛んでしまった。

奴は何故か志摩くんの方へ。



『アカーンッ!!!』


そう言って志摩くんは私を意図も簡単に抱えて(お姫様抱っこをして)走り出してしまった。



『え!?ちょ、志摩くん!?』


志摩くんは私の言葉が聞こえていないかの様に風を切って走る。






(もう…虫苦手なら教えてくれれば良いのに)
(やって女の子にはカッコ悪いとこなんて余り教えたく無いもんや)
(…ばか)




【彼の意外な一面に触れた】





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