日常的な志摩くんと私

□さりげない愛言葉
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天気予報が外れた。


私は毎日天気予報を見ている。

予報は晴れ。

的中率は90%。

しかし今日はなんと無くそう、本当になんと無く雨が降りそうな気がして傘を持って来た。



そして、今。





ザアァァ…



しとしと、と表せるわけもない土砂降りの雨。

なんとなくで持ってきた傘が役にたつなんて。

自分の勘に感謝する。



『…あれ?』



私が帰ろうと傘を広げかけると見慣れた頭を見つける。

彼は急に土砂降りになったものだからどうしようかと考えているみたいだった。



『しーまくんっ』

「…?あぁ、なんや葵さんやありませんか。まだ学校にいはったん?」



そう言ってすぐにまた考え込む彼。

そんな彼を無視して帰るなんて考えられなくて。



『はい』



私はなにも考えず持っていた傘を彼に差し出す。

志摩くんは、というとキョトンとした顔で傘と私を交互に見ている。

傘、無いんでしょ?と言うと彼は納得して笑った。



「ほんなら遠慮なく」



そう言って私の手から傘をさらっていく。

少し触れた手に胸が音を立てた。



「そう言えば…葵さんはどうしはるんです?傘、」



傘を開きながら振り向き私に問い掛ける。

もちろん私はそんな事、全く考えて無くて。

ただ志摩くんの役に立てればって。



『友達でも掴まえて入れて貰うよ』



しばらく考えて出てきた言葉はそんな今の時間だと成功は難しい言葉で。

もちろん志摩くんはそんな私の答えに頷いてはくれなくて。



「せやったら何で僕に貸すなんて事しはるん?そないな事せえへんでもええのに」



そう言って困った顔をする志摩くん。

私の事を心配して出そうとした右足を戻して立ち止まる彼。



「だって志摩くん、困ってたから…」



私がそう言うと志摩くんはふっと笑って。

葵さんはかわええなぁ。と言って傘を突き出してくる。

そんな彼の言葉に戸惑っていると志摩くんは一言こう言った。



「僕な、かわえぇ子と相合い傘して帰るのが夢やったんよ」



そんな事を言って志摩くんはほな帰りましょ、と私の手を引く。

触れ合う手に胸が煩くなる。



「葵さんのお陰で夢、叶いましたわ。おおきに」



彼の意外な言葉に胸が大きく音を立てた。

顔が風呂上がりの様にほてって志摩くんの顔を直視出来ない。



【さりげない愛言葉】






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