story of P

□名前なんて知らない
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落としたぞ?という声に後ろを振り向けば紫の花を持った綺麗な金色の瞳の高校生らしき少年。
っといっても俺も高校生だから多分同い年だろう


そして、その花には見覚えがある。特に花に詳しいわけではないがその花には見覚えがあった
さっき自分が足を運んで買った花束の一束





「あ、」





このとき初めて自分がそれを落としたことに気付いく
それと同時にソイツは落とした一束の花束を差し出してきた





「ほらよ」



「あ、すまない…」





ソイツから差し出された一束の花束を焦る気持ちを抑えながら受け取る
ここは思いっきり感謝の弁を述べるべきなんだろうが、自分の性格上それは叶わなかった


そんな自分に軽く自己嫌悪しながらも、ソイツの顔をまともに見れず、
無理矢理受け取った花に視線を移した。

花の方は傷もついておらず買った時のままのようだ





「よかったな、花」



「あぁ、本当に」





俺がそう言うとソイツは言葉の代わりと言ったように微笑み、行ってしまった
辺りも暗く、闇に紛れ人に紛れてアイツの姿は直ぐに見えなくなってしまった





「あぁ…」





アイツが消えて行ってしまった方面をぼんやりて眺めなる
もう少し話したかった。だなんて自然にそう思った時には驚いた

それと同時に納得もした。





「っは、何も知らないのにな」





何も知らない
名前も年齢も好きなものも嫌いなものも、

何も知らない


アイツが誰とも知らない輩が落とした花束を拾える人間で、
特徴的な髪型に綺麗な金色の瞳を持っている事くらいしか知らない

だから、知りたくなった



拾われたのは一束の紫の花
拾ったのは名も知らないアイツ


紫の花と金色の瞳。
なんの縁もないが落とした事に、数分前の自分に少し感謝した





「金色か…ゴールドって名前だったりしてな」





俺みたいに。

と、流石にそんなご都合な事はないんだろう
だけど考えてみるのも悪くない
そう考えて俺は姉さんが待つ家に、ちょうどアイツが消えていった方向と真逆に向けて足を進めた





勿論、数日後
レッドの後輩だというゴールドと名乗る人物が家に来るだなんて思いもしない





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