†薄桜鬼†
□†次ノ夜†
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雪村千鶴は目の前でおこっていることに混乱を隠せなかった
闇夜に浮かびあがった紅い目
人間を切り刻む狂気の白い髪
血をすする集団
そして、その人達をいとも簡単に斬りすてた二人の男
「僕ひとりで始末しちゃうつもりだったのに。斎藤君、こんなときに限って仕事が速いよね」
「俺は務めを果たすべく動いたまでだ。……あんたと違って、俺に戦闘狂の気は無い」
「うわ、ひどい言い草だなあ。まるで僕が戦闘狂みたいだ」
「……否定はしないのか」
テンポよく進む会話についていけなかった千鶴を黒い髪の男─
新選組三番組組長・斎藤一が一瞥する
「でもさ、あいつらがこの子を殺しちゃうまで黙って見てれば僕たちの手間も省けたのかな?」
千鶴の顔が引き攣った
恐怖と警戒とが入り交じったような表情のまま硬直する
「さあな。……少なくとも、その判断は俺たちが下すべきものではない」
「え……?」
逡巡した千鶴の脳裏に一つの名前が浮かび上がる
浅葱色の隊服を着込んだ
剣に長けた者の集団。
「まさか──」
ふいに影がさして。
なびく長髪に千鶴は息をのんだ
「あ……」
「……運の無い奴だ」
眼前に突き付けられた白く光る剣の切っ先に千鶴の表情が強張る
「いいか、逃げるなよ。背を向ければ斬る」
低い声で告げられた衝撃の言葉に千鶴はこくこくと頷く
「……」
その男
新選組副長・土方歳三は
眉間にシワを寄せると、ため息をついて刀を鞘に納めた
「え……?」
あっさり刀を引かれ千鶴が間抜けな声を出す
そして茶色の髪の青年
新選組一番組組長・沖田総司が
咎めるように口を開く
「あれ?いいんですか、土方さん。この子、さっきの見ちゃったんですよ?」
総司が目を細めると、土方はますます眉間にシワを寄せる
「……いちいち余計なこと喋るんじゃねえよ」