†短編†
□×染めし紅×
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──ふわり、ふわり、と
『白』が落ちてきた──
「おいこら眞那」
「あぁン?…副長じゃねェか」
「てめえこの寒い中何やってやがる」
朝いつもより早く目が覚めて
何の気無しに廊下に出た
庭に面している廊下をあてもなくぶらぶらしていると中庭に見慣れた金髪を見つけたのはよかったのだが─
そいつは廊下から中庭に下りる時用の石に腰を据え、頭を廊下にもたれさせていた
それもいつもの着流しに女物の羽織りを羽織っただけの薄着で
「風邪ひきてえのか」
「うるせェな」
ただでさえ寒い季節で今朝は雪まで降っているというのに眞那は平気な顔をして中庭に足を投げ出している
「何がしてえんだ」
「俺が感慨に耽ってたら可笑しいってかァ?」
「何、を考えてんだ」
早朝の澄み切った空気の中で目を閉じる眞那は恐ろしいほど美しくて、それと同じくらいはかなくて消えてしまいそうだった
「なあ、副長ォ」
「…なんだ」
閉じられていたはずの眞那の目は側に立つ土方をしっかりと視界に映していた
「──消えねェんだ」
「…はあ?」
「消えねェんだよ。血の、匂いが」