†短編†
□×染めし紅×
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「──ってな感じでよォ。寝覚めが悪すぎてなァ」
喉の奥で笑う眞那に土方は眉をしかめた
「お前でもそんなこと考えたりすんのか?」
「人を殺人鬼みたいに言うんじゃねェよ」
ま、似たようなもんだがなァ。と笑う眞那の頭の横に腰を下ろし中庭を眺める
「剣の音やら、悲鳴やら、んなもんは大して気にならねェんだよ。だけどなァ…」
そこで言葉を切った眞那は自分の右手を前に突き出した
「手に、こびりつく(紅)と鼻につく(血の匂い)が──消えねェ」
ぐっ、と握りしめた眞那の手は恐ろしく白い
この白い手が、眞那には血に染まって見えるのだろうか
「やめとけ」
気がついたら
そんなことを口走っていた
「殺やらなきゃ殺られる。それが俺達の生きてる世界だろうが
殺るか殺られるかの瀬戸際で、匂いだなんだ言ってたらこっちが殺られちまう」
「まァ、そうだろォな。俺が狂気じみてるのは否めねェからな」
くあ、と欠伸をしながらだが、眞那は土方の言葉を聞き流そうとはしなかった
「てめえの(刀)も(心)も、なんならその(狂気)も。今は仲間を守る大切な(力)だろうが」
「……」
「お前や仲間守るためなら、俺ぁ鬼にだってなれる」
だから、と土方が言葉を続けようとした時、眞那の肩が震えていることに気づいた
「おい、眞那?」
「く、くくくっ!くははっ!」
土方が眞那の顔を覗き込んだ瞬間
眞那は爆笑した
「に、似合わなすぎだろ、副長ォ」
「て、てめえ…」
ひーひー言いながら笑う眞那に土方は青筋をたてた