†短編†

□×染めし紅×
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「くくくっ。いやァ…珍しいお言葉が聞けたもんだなァ」



「てめっ!眞那!」



「怒んじゃねェよ」






よっ、と。
石から腰を浮かした眞那は庭に降りていた素足のまま廊下に上がって胡座をかいた





「もっとも、だなァ」



「ああ?」



「俺ァ、局長みたく幕臣取り立てだの、尊皇攘夷だの、興味はねェんだよ」





胡座をかいた土方の隣に座った眞那はいきなり話を切り出した






「ただ仲間のために。今の暮らしのために。…俺ァ自分のわがままのためだけに人を殺せる」



「…」



「だがそれを悪ィと思ったことはねェ。人間は貪欲な生き物だ、俺ァその中でも拍車をかけてるしよォ」




す、と袂からキセルをだし慣れた仕草でくわえる眞那




「この日々が続くなら、血の匂いも紅い色も悪くねェのかもしれねェよ」





「…大したやつだ」






飽きれ気味にそう言えば眞那は誰に言ってやがる。と笑った






「じゃ、そういうことで。膝貸せや」



「は?」



「丑三つ時ぐらいから中庭にいたからよォ、眠くてしょうがねェんだ」



「はあ!?」






すでに自分の膝に頭を預けた眞那に土方は怒っているような照れているような微妙な顔をする





「副長ォ」



「あん?」



「お前は、俺が守ってやるよォ」



「馬鹿言うんじゃねえ。てめえは俺が守ってやる」



「ハッ…頼もしいねェ」




















──雪が落ちてきた






──冬の残り香をたたえて








ふわふわと宙を舞う真白を掴んで手を開くと掌には小さな水溜まりが出来ていた























(…てめえの背負ってるもんくらい、いつでも受け止めてやらあ)








─世界が真白に霞む



─願わくば



─自分の膝で眠る彼にも



─部屋で眠る彼等にも



─闇を暗躍する彼にも









──平等に光が降り注ぎますように






×終×
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