†薄桜鬼†

□†初ノ夜†
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ひらひらひらと
舞い落ちる花びら

はらはらはらと
散りゆく桜



隙間から吹き込む清涼な風と
目の前に広がる淡い桃色が



─春の訪れを告げていた─















「眞那様」


ふと障子越しに響いた声に
黒羽家頭領、黒羽眞那は伏せていた目を開いた


「なんだ」











「雪村一族が滅びました」




ぴくり、と片眉が跳ね上がる


しかしそれも一瞬
すぐに元の表情に戻り、障子の向こうにいる者に話の先を促した



「人間共の協力を拒んだことにより、村もろとも焼き払われたようでございます」





「生き残った者は確認されませんでした。おそらくは、」


障子の向こうにいる者はその先の言葉を濁した


おそらくそういう事なのだろう








眞那の口元に苦笑めいた笑みが浮かんだ



「助力を媚うた鬼を倒すか…その力、戦に使えばいいものを」



冷徹な言葉が広大で豪奢な部屋にしんしんと響く



「愚かだな、人間という種族は」



じっと聞いているのだろう障子越しにある気配は動かない





「世間体を気にし、金銭に目がくらみ、己の命を惜しむ」



ふっ…と人知れず自虐ともとれる複雑な笑みを浮かべる



「全く人間というのは



無能で

滑稽で

愚鈍で

臆病で



愚かな生き物だな」








そう呟いた眞那の声音には人間を嘲笑うような、侮蔑するような響きが含まれていた





「…どうなさいますか?」



眞那の心情を察しようとしているのか幾分和らいだ障子越しの声に眞那はゆるりと立ち上がった





「風間の当主を、ここへ」



「仰せのままに」


ふっと障子越しの気配が消えた
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