†薄桜鬼†

□†士ノ夜†
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突然現れた眞那に千鶴は驚きを隠せないようであんぐりと口を開けている



「また…?」


総司の疑問めいた言葉を眞那はやんわり受け流すと千鶴の前に立ち少し腰をかがめた





「自己紹介がまだだったよなァ?

新選組零番組組長兼観察方頭

及び

総長補佐役参謀、隠密忍隊隊長の

高杉眞那、だ


以後、よろしくなァ?」









長い羅列を一気に綴られ千鶴は困惑した表情で眞那を見る



「ようするに、隊長であり隠密であり参謀ってとこだよね」

「一々名乗んの面倒なんだよなァ…長ったらしい役職名だぜ」



横槍を入れてきた総司に眞那は微笑をもらす
















「…お前の意見は?」


ぽつりと背後で呟かれた言葉に体を捻れば古座をかいたまま俯いている土方。その姿に眞那は苦笑した



「副長に、一任する」


その言葉に土方はほっとしたように息を吐き出した










しかしすぐに表情を引き締めると千鶴を見据えた


「おまえの身柄は新選組預かりとする。が、女として屯所へ置くわけにゃいかねぇ」


「ま、当然だなァ?」


「だからおまえには男装を続けてもらう…面倒だろうが、辛抱してくれ」





土方と眞那の言葉の意味を理解したようで千鶴は小さく頭を縦にふった
























「俺ァ部屋に戻るぜ。ここんとこ忙しくてよォ」


くるりと踵を反す眞那の腕を総司が掴み引き止める


「まだ、僕らが聞いてないことがあるよね?」


「…明日話す。今は眠てェ」



それだけ言うと今度こそ眞那は部屋を後にした


「眞那…」

「んな顔すんじゃねえ。総司。眞那が今まで俺らに隠し事したことはねえだろうが」

「そのくらい土方さんに言われなくても分かってますー」


苦笑する土方に嫌味ったらしく言い放つと総司は欠伸をする



「ふあっ…眞那のが移ったのかも…僕も部屋戻りますから」




「テメェは今から巡察だろうが!」




















ゆるり、ゆるりと
自室に向かう廊下の途中で眞那は足を止めた


辺りに自分以外の人間がいないかを念入りに警戒しつつポツリと口を開く


「……烝(すすむ)」


「此処に」



瞬時に音も無く眞那の背後に降り立った影


新選組諸士調役兼観察
山崎烝

忍隊の副長でもある彼は土方と行動を共にする一方で眞那に付き従うという役目も担っている




「雪村綱道を徹底的に洗い出せ。出生、生い立ち、京に来るまで、京に来てから、今現在どこに居て、何をしているのか」

「御意」


「それと…──」


暫しの沈黙
思案を巡らせる眞那を山崎は尊敬と崇拝の眼差しで見つめている



「……雪村千鶴から目を離すな」

「は。…万が一の場合は…」



山崎の問いに眞那は黙り込んだ
ふと自分の前に膝をついている山崎を見る



「…お前は、その時どうする?」




キセルを吹かしながら問う眞那に山崎は何の躊躇いもなく力強い声で答えた


「頭の御心のままに」



その答えに眞那は口角を吊り上げ喉の奥で笑う



「そォだな。その時は、」


ふわり、と風に腰まで伸びた金髪が揺らされはためく



























「斬れ」


「御意」
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