†薄桜鬼†
□†壱ノ夜†
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「とりあえず」
「?」
考えがまとまったのか男は千鶴を見つめ言葉を発した
「今日は…近場に宿をとって早く帰りなァ」
「へ…?」
男の謎めいた言葉に千鶴はおもいっきり眉を潜めた
「深い意味はねェ。最近の京は治安がよくねぇからなァ」
そんな千鶴を見て男は口角を吊り上げた
よほど面白かったのだろう喉の奥でクツクツと笑っている
「いつ何時、首をかかれるとも知れねェ」
「!!!」
いきなり真顔になった男に千鶴は背筋に悪寒が走るのを感じた
「京の夜は深い。闇にのまれないよう気をつけなァ」
「は…はい。」
素直に頷く千鶴に男は満足そうに笑いキセルをくわえなおす
「あの、」
貴方のお名前は?
千鶴がそう聞こうとしたその時だった
「高杉ーーー!!!」
人混みの喧騒などものともしない大声が聞こえた
「おっと、連れが来たみてェだ」
苦笑しながらも声のトーンから喜んでいるのがよくわかる
「それじゃあな。機会があったらまた会おうぜェ」
それだけ言うと男はくるりと身を翻し人混みの中へと消えていった
「たか…すぎ、さん…」
残された千鶴がポツリと呟いたその言葉は風に掻き消されて消えた