†薄桜鬼†

□†士ノ夜†
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××数日後××







「ん、んん…」


障子の隙間から入り込んだ眩しい朝日に眞那は顔をしかめながら起き上がった



「よく寝た…ってこともねェか」



ここ数日、徹夜で残っていた仕事を片付けいつも眠りにつくのは深夜


昨晩やっと仕事を終わらせ少しではあるがまともな睡眠を取れた眞那は軽い足どりで部屋の外へ出た


















上機嫌で廊下を歩いて行くと中庭に人影が見えた。眞那は暇つぶしにでもと人影に声をかける


「よォ、総司、一」



驚いたように振り向く二人に眞那は首を傾げる


「何やってんだァ?朝っぱらから」

「それは僕らの台詞だよ」

「寝てなくていいのか?」



呆れたような顔の二人に眞那は袂からキセルを取り出す


「今日は非番だからなァ。だからってダラダラすんのも体が鈍りそうだろォ?」


「それもそうだね」


「後で稽古にでも出ようかと思ってんだがなァ?総司、一、俺に付き合うかァ?」



ニヤリ、と口角を上げ笑う眞那に二人は笑顔で頷いた


「もちろん、楽しみだね」

「久しぶりだな…」


そんな二人を見て眞那も笑みを浮かべながら「じゃあ後でなァ」とその場を去った


















ふらふらとあてもなく歩く眞那の耳にふと複数の聞き慣れた声が飛び込んできた



『でも、女ってわけじゃねぇよ!皆で酒飲んで馬鹿騒ぎしたい気分なんだ』



何か面白いことでもあったな。
そう思いなが眞那は声のしたほうへ歩を進めた



玄関口へ行ってみればそこには、原田、平助、永倉そしてなぜか雪村千鶴がいた





「おいおい。こんな真昼間から島原かァ?盛ってんなァ、新八」


「「!!!」」


突然現れた眞那に驚きながらも永倉は必死に反論し始める



「眞那もそういうことサラッと言うなよ!つーかなんで俺だけ名指しかなんだよ!」



「大方、左之と平助は酒だろォが。女目当てはテメェだけなんじゃねェのかよ?」


ぐっ、と永倉が言葉に詰まる



「ごもっとも、だな?」

「眞那さんの言う通り!」


ニヤニヤと笑う相方達に永倉は裏切りだのなんだの騒いでいる


隣に立っている千鶴と目が合うと千鶴は小さく頭を下げて「おはようございます」とつぶやいた

「よォ、お嬢さん」


















「眞那も一緒に行くか?」


暇そうにしている眞那を見て原田はにっと笑う


「眞那さん!行こうぜ!」


ニコニコ笑いながら飛びついて来る平助に微笑みながら眞那は首を横にふった



「生憎、俺ァ朝型じゃねェからな。真昼間から酒は体に合わねェ」


「久しぶりの非番だしな」


残念がる二人を宥め、それじゃあ行ってくるわ。と三人が踵を返そうとしたその時



「おや、これから皆で出かけるのかい?」


廊下の向こうから歩いてくる井上に三人の顔が引き攣った


「よりによって源さんかよ…!」



小さく悪態づいた原田に眞那は苦笑しながら事の成り行きを傍観しようと柱に体を預けた





















「彼女のことはお任せするよ。じゃあ永倉くん。我々は中庭へ行こうか」

「平助のみならず、お前もか左之…!」




「よし、逃げるぞ」


最終的に原田と平助、千鶴はその場から脱出を計り、永倉は見事に置き去りにされた


「じゃあまたな、眞那」

「後で話そうぜ!」

「し、失礼しますっ?!」



バタバタと走り去った三人に苦笑し、取り残された原田をちらりと見た



「君もどうかな?」


さりげなく井上に稽古に誘われた眞那は永倉のことを考え、一緒に


「俺ァいい。今から着物と刀を取りに行くからよォ」


するわけもなく、あっさりと断りさっさとその場を逃げ出した





「眞那ーーー!」



背後から聞こえてくる叫び声に眞那は哀れみを込め笑う




「ご愁傷様」
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