†短編†
□×染めし紅×
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─夢を見た。すごく、すごく久しぶりに─
目を開けると
暗闇にいた
(どこだァ?ここは)
辺り一面が暗闇で
上も下も判別がつかない
『ぎゃああああっ!!』
『殺せぇええっ!』
(!!?)
ふいに鳴り響く怒号
断末魔の叫び声
ぶつかり合う剣の音
(あァ、ここは──戦場かァ)
充満する血の匂いに戦場であることを確信した瞬間
視界がクリアに晴れた
周りにいるのは敵
場所は──どこか屋内のようだ
少し離れた場所で戦っている後ろ姿には見覚えがある
(平助、かァ?)
どこかぼうっとした意識で立っていると背後から殺気を感じた
─頭ではなく体が勝手に動く─
『ぎゃああああっ!!』
切り裂いた敵の血が
顔に、手に、服に、飛び散った
(…赤い、血)
見慣れたはずの色が
いやに目につく
手の平から滴り落ちる赤に
思わず眉をしかめた
『眞那!!』
(佐之かァ?)
自分を呼ぶ声に振り返れば
槍を片手に走り寄ってくる仲間
その顔を見た瞬間
足元が崩れ落ちる気がした
(あァ、落ちる)
暗闇に落ちる寸前──
充満した血の匂いが
いつまでも鼻孔に残った