零式短編
□歪めた顔、歪んだ笑み
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「エース!」
「…何だ?」
いつもみたいに、冷たい声色で彼女に反応する。
すると彼女はすぐに表情を変えて、寂しそうに下を向く。いつものことだ。
「あ、あのね、明日、エース任務が無いって聞いたから。その、よかったら…」
「無理だ」
必死に言う彼女から適当に目をそらして呆れたような溜息をついて言えば、完成。あっという間に彼女の顔は歪んで、またおどおどと言葉を繋げ始める。
「…また、あの女の子…?」
面白い位に動揺して、声を震わせてさも苦しそうに言う。絞り出したようなその声は、僕の気分を高揚させた。墓穴を掘った彼女に、僕も言葉を続ける。
「ああ、そうだ。…あいつにも悪いから、もう僕の側をうろつかないでくれないか?僕が好きなのはあいつだけだから。」
いつもより冷たくなる言葉。言葉で突き放して、冷たい視線を送る。今日の僕は機嫌がいい。
ついに彼女は涙目になって、ごめんね、と聞こえるか聞こえないか位の声で呟くと走って行ってしまう。なんてわかりやすい奴だ。でも、諦めずに毎回よく来るな。
僕は走って行った彼女の歪んだ顔を想像して、楽しくて微笑む。
…そうだ、そのまま、僕でいっぱいになればいい
心の中でそう、そっと呟く。
愛しいあいつを想像して、溢れそうな想いにもっと顔が緩む。
あの女子?そんなの、お前の気を引くために決まってるだろ?あんな女好きになるわけないじゃないか。馬鹿だな、あいつは。
もっともっと嫉妬して、僕でいっぱいになって、苦しくて死にそうになったら、迎えに行ってあげる。
…迎えに行くまでは存分に僕に溺れて、僕の虐めに泣いてればいい。
だから、愛しいお前の悲しそうな顔、もっと見せてくれないか。
…彼女の悲しそうな顔を思い浮かべて頬を緩ませ、僕はこの場所を後にした。
歪めた顔、歪んだ笑み
***
ドSに病んでるエース。
うまく表現できないピャアア!
お題提供 liberalism