Zero

□序章
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「……エース!エースってば!」
「ん……」

甲高い声が聞こえる。耳が痛くて顔をしかめるも、もう少し、と目を開けようとはしない。
いやいやをして布団を引き上げが、ねえエースとイライラした声がかけられ逆側から布団を剥がされる。外の空気が触れ、寒さに体が少し震えた。今日も寒い、冬の朝だ。

「遅刻!遅刻してるんだってぇ〜」

寒いので更に反抗し目を閉じたまま布団を探していると、内容には見合わない間のびした声が部屋に響く。遅刻?まさか…!

「…っ遅刻?」
「でも慌てなくていいよぉ〜」
「はぁ…まだ寝てるのよね」

慌てて起き上がるも、促されて回りを見渡すと、確かに僕、ケイト、シンク以外はまだ寝息を立てている。起こしてるのに起きないんだ、と多少イラつきながらため息をついてケイトが言った。

「昨日、夜更かししちゃったからねぇ」
「シンクはちゃっかり寝てたでしょ」
「だってぇ〜」

そうだ、昨日は確か夜遅くまで皆で話し込んだんだった。その状態のまま寝付いてしまったから、こんな床に散らばって寝ているのか。
だんだん意識がクリアになり、時計に目を移すと、いつもの時間をとう一時間は超えている事に気づく。さすがにマズい。

「起こさなくていいのか?」
「あ!!」
「そうだったね〜」

慌ててケイトが立ち上がり、怒声を響かせる。それでも誰一人起きないので、楽しそうにシンクが加わり2人で怒鳴り散らし、僕はみんなを起こして回る。

「もう、ケイト、シンク…うるさいですよ…って、えええ?!何故!何故こんな時間なのですか?!」
「…うるさいぞ、クイーン」
「そ、そんなこと言ったって!少しは慌てなさいよ!」
「ふあぁ…俺はまだ寝る」
「何言ってるのよ!」

まず起きたのはキング、クイーンの2人。起きた途端慌ててクイーンは身支度を整え、家中を走り回る。シンクが情けない声でクイーンお腹すいたぁ、なんて言った事でクイーンは更に忙しくなりながら、甲高い声でみんなを起こしていった。キングはとりあえずゆっくり起き上がり、マイペースに行動している。

「も〜、クイーンうるさい…」
「…朝か。」
「おはようございます…あれ?!こんな時間!」
「もう朝か…」
「おはようございます皆さん、今日は晴れますが気温は低いらしいです、暖かい格好を忘れず…に…」
「信じられないね、コイツ寝言もこんなんかよ」

続々と仲間たちが目を覚ます。
渋るジャックをエイトが叩き起こし、何故こんな時間なのかわからずその場で慌てるデュースを見て落ち着けと笑うセブン、夢の中で語り続けるトレイをうざったそうに蹴り起こすサイス。思い思いに行動する僕らにクイーンは手を焼きながら、何だかイキイキした瞳だ。…楽しそうで何より。
だが、まだ一人、目を覚ます気配が無いようだった。

「ナーイーンー!!」
「ナイン!起きなさい!」
「ナインってばぁ!」

そう、ナインだ。
クイーン、ケイト、シンクの三人でかかっても、目を覚ますどころかピクリともしない。それどころか殴られかける始末。三人が手を焼いて居ると、不意にどけ、とキングが現れる。三人はさっさと交代し、キングに役を任せた。

「おいナイン、起きろ」
「……」
「ナイン、朝だ」
「……ん……」
「起きろ」
「うっせぇ…」

すると辺りに鈍い音が響き、忙しく動いていたみんなが動きを止めて音のした方を振り返る。

「ってぇなコラァ!!!!!」
「起きたか」

振り返った時にはナインが飛び起き反撃にキングに殴りかかるも、簡単に避けられ床と額をぶつけている場面。なんとも滑稽だった。キングはさっさとその場から離れ、既に自身の用意を始めている。
みんな最初は驚いていたが、次の瞬間弾けたように笑いだす。

「ちょっ…ナイン!おでこ!真っ赤!」
「変な顔〜」
「変な顔だねぇ!」
「…ぶっ…くっくっくっ…」
「おいテメーら!何笑ってんだコラァ!」
「こらナイン、さっさと支度なさい、遅刻なんですよ!」

笑いの中ナインはクイーンに喝を入れられ、痛む頭部と額に手をやりながら、しぶしぶ動き出した。
笑いを後に引きながら、みんなまた思い思いに支度に移る。さっきまで怒っていたケイトも楽しそうな表情に戻っている。トレイもしくじりました!とか何とか叫んで目を覚ましたようだ。サイスとセブンはさっさと支度を終え家を出ようとしていた。

「待ってよ〜2人〜」
「ジャック、アンタが一番準備遅いみたいだね」
「あはは、ジャック、置いてくよぉ〜」

その2人を追いかけ、情けない声を出しながら朝食を掻き込むジャック。後ろからシンクがわ!と大きな声をだしたことによりジャックは咽せてしまい、涙目になりながらシンクを追いかけている。

「皆、いくぞ」

まだ家の中でもたもたしているみんなに声をかける。さっきまでバラバラに喚いていたが、流石にマズいと悟ったらしく、おとなしく玄関に集まる。
いまだ咽せているジャックに、咽せるというのは…とくどくどと語り出すトレイ。ジャックはそんな事いってるなら助けてよとトレイに食ってかかる。それを見兼ねてキングが制するも、ジャックは涙目になってグチグチと何かを言っている。

「行きましょう」

みんなが家をでた事を確認し、クイーンが家に鍵をかける。空を見上げると、相当ないい天気だ。
それぞれがクイーンに反応し、僕たちは家を後にした。


スタート・ゼロ
(いつもどおりの幸せな朝)

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