小話

□木の葉を隠すなら森の中
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「俺のファンだったのか!」

斜め上をいく解答に思わず「はい?」と声が出そうになった。
タイガーはといえば本当に嬉しそうで、そんなにファンがいないのかと心配になる。
けど、そんな顔されたら違うなんて言えない。

「はは、そっか、そうならそうと早く言えよ。」

ファンだけどファンじゃない、何とも複雑だ。

散らばったカードを2人で拾う中

「ちょっとこれ借りてもいいか?」

「いいけどどうするの?」

「それはお楽しみってやつだ。」

ニカッと笑ったタイガーはずっと年上なのに子どもぽっい笑顔
 
「別にいいけど」

「じゃあ借りてくぞ。楽しみにしてろよ〜」

集め終わると袋を持って立ち去るタイガー

自分のカードで一体何をするのだろう。

数十分後、トレーニングを終えのんびりしていると、お楽しみを携えてタイガーがこちら向かってきた。

「待たせたな、ほら、返すぜ。」

袋を受け取るが重さは大して変わっていない。

「いつかプレミアがつくかもな。」

それだけ言い残すとさっさとトレーニングへ向かうタイガー

(もう行っちゃうんだ)

あれだけはしゃいでいたから、てっきり一緒に見るのかと思っていた。

ちょっぴりしぼんだ気持ちのまま中から一枚カードを取り出す。カードには黒のペンで

『ヒーロー参上!』
 
と書かれている。
まるでタイガーがそう言ったみたいにはっきりと聞こえた。

期待が胸をうち、もう一枚カードを引く

『ワイルドに吠えるぜ』

懐かしい彼の名言
小さく笑みがこぼれる。

止まることなく、カードを引いていく。驚くことに書かれた言葉は全て違う。

『ガンバレ』とありふれた応援から『君の笑顔は俺が守る』なんて一瞬ドキッとさせられる台詞まで幅が広い。
 
ついに最後の一枚

見てしまうのが勿体無い、けど見たい

袋の中から残ったカードを引く

『好きだ』

息が止まり、全神経はカードに集中する。

タイガーが私を好き?
ないない、それはない
でも、もしかしたら
そもそも何で好きなんて書くわけ?
これでも一応異性なんですけど
嬉しすぎるどうしよう

ああ、整理しきれない感情がごちゃごちゃして頭がガンガンする。想いの一つ一つをどこかに取り置きしておきたい

カードを握りしめ俯くと同時に大きく深呼吸


もう配るなんてできない
全て大事な宝物




END



 
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