♂♀長編
□1日め
1ページ/2ページ
「悪かったな」
綱海がニッとまぶしい笑顔を向ける。
向けた相手は少し虚ろな瞳だった。
「何がだよ?」
風丸は薄く笑いながら彼に視線を移す。
「謝るのはオレの方だろ。お前を吹っ飛ばしたんだから」
「まぁな〜!…って違う違う!お前にあんなキツイ事言っちまって。女の子だとは知らずによ」
頬をポリポリ掻きながら綱海は言う。
風丸は小さく呟く。
「女扱いしないでくれ。オレはそれも、嫌なんだ。すまないな…」
DE戦が無事に和解、という形で幕を閉じた。
もうほとんどがDEだったなど気にせずにキャラバンメンバーと和気藹藹しているというのに、彼女は違った。
まだ何処か、辛そうだった。
綱海はそれに気づいたのだ。
まだ風丸の心には闇がある。
彼女は円堂に呼ばれ、そっちへと足を運んだ。
可哀想にな。
そうやって強がることしかしねぇ
違うな、そういう環境にしかいれなかったんだろうな。
……女の子なのにな。
綱海は悲しそうに彼女を見る。
円堂や豪炎寺達は素直に風丸が戻ってきて喜んでいた。
彼女に恋心を抱いているのだ。
それで、風丸の微かに違う状態には気づかないでいるのだ。
綱海は円堂達の風丸に対する気持ちは気付かないものの、彼女の気持ちは分かって居た。
海で鍛えた第6感━━、というとこどろう。
「風丸ってよう、ああいうやつなのか?」
綱海が鬼道に話かける。
「ああ。大人しい、というか穏やかな奴だな。円堂の幼馴染だそうで奴の保護者みたいな感じだな」
フッ、と鬼道は笑う。
荷を解いたように。
「へぇ〜」
「でも…なんか前より感じ違くないか?」
塔子が2人の会話に割って入る。
「そうか?」
鬼道が答える。
綱海はおっ、と反応する。
「なんか…今にも泣きそうな顔してるよな」
「うーん。言われてみれば…」
綱海は「おっしゃああ!」と声を張り上げた。
鬼道や塔子だけではなく、メンバー全員が突然の行動に驚く。
綱海は風丸に近づいて手をグッ!と引く。
「な、なんだよ綱海」
おののく風丸を他所に彼は爽やかに笑いながら、口を開く。
「海に…沖縄に行くぞ!」
一瞬の沈黙が流れる。
次の瞬間には疑問に変わる。
「「「えええ?」」」
それでも綱海は笑っていた。
『にーにと暮らす7日間』
.