♀長編

□2日め
1ページ/1ページ


2日目・木曜日(雨)



「はぁっ…はぁ……」


熱い…
情けない、あんなので熱を出してしまうなんて。
やっぱり自分は弱いのか。
全てにおいて、弱い。



「おらおら!病人は大人しく寝てろよー!!」

綱海がボフッ!と布団を風丸の上に重ね、氷枕を持ってきた。


「綱海、ごめん」

氷枕を下に敷きながら風丸が泣きそうに謝る。

「いいっていいって!て言うか原因オレだしさ」

布団の上からポンポン、と叩きながら彼は話す。



「…オレが弱いからだよ」



ピク

綱海の手が止まる。

「…風丸!」

「な、なに?」

「オレのこと『にーに』って呼んでもいいぜ!」

「……へっ?」


頭をクシャクシャ撫で回して屈託無く笑う。


「お前に必要なのは『頼ること』だ!何でもかんでも自分1人で溜め込むのが一番悪ぃ!ほら、言ってみろ」


呆気に取られたものの、風丸は何処か嬉しくなった。

初めてだったのだ。

誰かに頼れ、なんて言われるのが。



風丸は小さく小さく、呟く。


「……にーに……」

恥ずかしさよりも好奇心が勝った。



綱海はウンウン、と頷きながら風丸に向かって笑いかける。



「にーにって、よく笑うね」

風丸が物珍しそうに綱海を見る。

「ん?ああ、クセみたいなもんかな。笑ってると気分がいいだろ?自分も相手もさ」

「そうだな…」


「じゃあオレからも1つ」

「何?」

「なんでお前は男みたいな話し方をするんだよ?」



「あぁ……」

風丸は懐かし気な声を発する。


「確かに。オレ、そういや女、って生き物なんだっけ」


いきなり
ハハハッ!と綱海が吹き出した。

「な、なんだよっ!?」

風丸が起き上がって綱海に口論する。彼は悪ぃ悪ぃ、と息を整えながら「大人しく寝てろー」と風丸を布団に転がす。


「だってよ〜、お前おっもしれーんだもん」

「どこが?」

「当たり前だろ〜!こんなキレーな顔して、男な訳ねぇじゃんか」

「………でも」


コロン、と風丸が綱海に顔が見えないように寝返りをする。


「オレ、男になりたかった」

「そりゃまた、何でだ」

笑い声混じりの話し方を止めて真剣に聞く体制を取る。


「だって女は男より弱いだろ。それが嫌、なんだ」


予想外の答えに綱海は言葉を無くしてしまった。

彼女、風丸はどれだけ辛い思いを抱えて居たのか。
今まで全く彼女のことを知らなかった綱海でも理解出来た。



「…ま。今日は熱下げることにだけ集中しとけ。お粥食えるか?薬、飲まないとな」

「うん」



再び起き上がって風丸は綱海特製の鮭粥をハフハフしながら食べた。

綱海は「んまいだろ〜」、なんて手前味噌なことを言ったりしていた。




風丸が食事を終え、薬を飲み、眠りにつく。


綱海は悲しそうにその寝顔を見据える。






「辛い時は辛い、って言えよ」


きっと彼女は自分に厳しく、非常に心が弱い。

だからこんな強がりな性格になったのだ。




綱海の兄貴肌が
全身全霊、動いた。




「(助けてやんなきゃな)」







.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ