♀長編

□居場所
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オレは何がしたいんだ?
オレは何処に行けばいいんだ?
オレは何なんだ?


ぐるぐると、自疑自答の言葉が頭を駆け巡る。





「風丸さん!」

「風丸!」

「風丸くん…」


サッカー部の一同が風丸に言葉を投げかける。

心配の意、疑問の意もあれば非難の意味も。




宮坂との話に何とか終点をつけて、急いで部室に入った瞬間に皆が風丸に注目した。


陸上部に戻るのか、
サッカー部に入るのか。

その過酷な2択を風丸に強いた。







「ちょ、ちょっと、待って…」

頭の整理が出来てないんだ。
何で、こんな時に。
宮坂に問われて、混乱している時に!


……もしかして
誰かがそれを見ていたのか?
だから、こんなことに。



「風丸、オレ達フットボールフロンティアをお前無しで戦うなんて無理だ」

「陸上部に戻るのはそれからでもいいじゃん?」



染岡、マックス!
何でそんな事が言えるんだよ!
お前等に何が分かるんだよ!

オレは……!


オレは!!






「風丸!」

バン!と彼女は部室を勢い良く飛び出した。


限界だったのだろう
彼女の心が。



弱くて脆い心を
男染みた言葉と性格で支えて生きている。

それが、風丸一朗太。
それが、風丸一加。




弱い心をさらけ出して生きることなんて出来ない。

涙なんて、見せたく無かった。




「……っ、ふぁっ」

泣きたくないのに。
涙が自然に溢れだす。

「うあっ、ふあぁっ…うあぁー!」



でも、
無性に泣き叫びたくなったのは何故だろう。

行き場の無い気持ちが空気にこだました。





















「…っぐ、ふぁ、っえぐ」

彼女の涙が嗚咽混じりになった頃、空は紅く色付いていた。



目をゆっくり開いて辺りの景色を見渡した。

目の前には川が流れ、手をついた先には芝が。


「(ここ河川敷か…!)」


勢いのまま走ってしまったため、場所なんて気にして居なかった。
人が居ない所ならば、何処でも。


「(人が居ない河川敷なんて珍しいな…)」

誰も居ないためか、川の音が良く聞こえる。







寂しい。






ふと、強がりな彼女の頭に過った言葉。



また、泣き出してしまった。




どうしよう、
どうしよう。

誰も居なくなったら!

1人になりたくないよ。
必要とされなくなるのは怖い!嫌だ!


この景色の様に、オレから皆離れて行くのは、
オレが1人きりになるのは。


嫌だ………っ!



裏切りたくない
恨まれたくない
選びたくなんてない!

オレはどっちも、
陸上部もサッカー部も大好きだ。




…無理だ…………。











夕暮れの河川敷、

1人、頭を抱える彼女の姿が水面に映っていた。




「(1人は嫌だ……!)」




クスン。






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