♂♀長編
□決意
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とりあえず、家に帰って来た。
まだ入っては居ないけど。
結局━━、
要らないと言ってるのに源田は最後までオレを送ってくれた。
何て言えばいいのか、分からないけど帝国にしては凄く良い奴だと思う。
まぁ、苦手だけど。
雷門ユニフォームのまま彼女は扉をゆっくり開いた。
「ただいまー」
お帰り、と両親の言葉が家の中に響いた。
夕飯を食べて、
お風呂に入って、
今現在は自室に風丸は居た。
まだ濡れている髪をベッドに広げながら彼女は横になっている。
ついでに、携帯画面を見ながら。
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NO.7
ゲンダ コウジロウ
源田 幸次郎
080-****-****
********@docomo.ne.jp
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『風丸、携帯!』
『え、何で?』
『携帯持ってるだろ?アドレス交換しようぜ!』
『えぇっ、ちょ、ちょっと…っ』
「………」
半ば無理矢理に交換したアドレスだけど、何か見てるだけで目が潤う。
こいつには何か信頼出来る物があるんだ。
円堂や、豪炎寺とはまた違う雰囲気がする。
精神が大人なのかな。
やっぱり、帝国だし。
…………。
オレの、空白に近いアドレス帳の7人目。
円堂以外で初めて『友達』の奴からのアドレスだ。
両親と、円堂と。
『仲間』のマックス、豪炎寺、染岡。
(1年、半田、仁は持って無い)
風丸の寂しいアドレス帳には1人追加された。
風丸の渇いた心に優しい1滴の水が垂れた。
━━あいつから勇気を貰った。
ちゃんと、皆に向き合える。
そんな気がする。
頑張ろう。
ギュ、と強く拳を握った。
円堂、みんな。
宮坂。
オレの決意を聞いてくれ。
泣き疲れたためか、彼女はそのままグッタリと眠りに落ちた。
彼女はまだ知らない。
これからの自分の運命を。
未来を。
この苦悩がまだ軽い物だとは思いもよらなかっただろう。
彼女は強くて、弱い。
何よりも頼ることを知らない。
助けて貰うことを知らない。
しかし今、それは矢印を大きく背けた運命へと変わりつつある。
でもそれは、
━━また別のお話。
彼女は、
苦悩と共に生きている。
弱さと狂乱を纏って…。
何も知らない風丸は小さく息を吸い、深い睡眠に入っていた。
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