♀長編

□X
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━━悪夢は終わらない

━━また、繰り返す。





『プレンツェル』
















カツカツカツカツ。

冷たそうな床を足早に歩く老女が居た。
その老女は今のご時世に相応しくない格好をしていて、小綺麗だ。




ギイイイ!━━


重い金属の扉を開ける。
扉の先には沢山の子供の笑い声、泣き声、叫び声など様々に飛び交う。


「ミス***、ようこそお出でくださいました。貴女様の加護はいつも私達や孤児達を救って下さいます」

「そんなモンはいいから、子供が欲しいんだ。顔の良い女の子をね」

孤児院の院長に老婆はそう言うと嫌な顔せず、院長は子供達をぐるりと見渡す。

自分達の負担が減るに越したことは無いのだろう。



「ずっと前に引き取って下さった佐久乃には及ばないかもしれませんが…リューって子はどうです?ほら、あの赤い髪の子の隣の」

「…まぁ、佐久乃とは顔立ちの種類が異なるが可愛い子じゃないか」


リューと呼ばれた、赤髪の子の隣で幸せそうに笑っている子供。
その笑顔は閉ざされることになった。

━━今はまだ、知らずとも。


「分かりました。ではお待ち下さいね」

そそくさと院長は手続きの準備に取り掛かる。


老婆は子供達を一望した。

佐久乃を見つけた時のような気の高ぶりは無い。
失敗した、と老婆は思った。





直後、その後悔は書き消されることになる。


老婆の足にボールが当たる。
テコテコと加害者らしき子供が老婆の元に近づいた。


「ごめんなさい!」

ニコ、と笑うと子供はボールで遊んでいた集団の中に戻って行く。


空色の髪を靡かさねながら。


老婆は目を大きく開いてその子供を見つめる。
そして書面やらの準備をしている院長の肩を掴み、やや興奮気味に話す。


「あのスカイブルーの子供、あの子供をくれないかい?」


院長は目をパチクリさせた。
次の瞬間予想だにしない言葉が老婆の耳に届く。



「あの子は男の子ですよ?」

「…なんだって?」

「ですから、男の子です」



そんな筈は。

老婆は顔をしかめた。


佐久乃並、もしかしたらそれ以上の幼いながらの美貌に身が震えたというのに。
男だと?



老婆は少し悩み、

「じゃあ2人共持ってっていいかねぇ?」

こう言うと院長は笑顔で「かしこまりました」、と返した。




男色家も少なくは無い。
それにあの美しさを見たら気が変わるやも。

しかしあの、ライトグリーンの女の子も捨てがたい。



そう考えて老婆は2人の子供を引き取って行った。


当の子供達は思わしく無いらしい。


若草色の髪をした女の子は先程から泣きじゃくっている。
忘れられないのは、リューを連れて行くときの、彼女の隣に居た赤髪の男の子の絶望に満ち満ちた目。

空色の髪の男の子はリューに比べたら大人しいものの、悲しそうにして居た。
1つ、彼には最初に見た時には無いものがある。
細い腕に巻き付いた、オレンジ色のバンダナ。





2人の子供達の運命はたった今、
残虐で絶望的なものへと大きく変わってしまった。





リュー7歳
風丸8歳

そんな幼き時の出来事。





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