♀長編

□二
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ス…と黒いイヤホンを耳に付けてそれの接続部分を携帯に繋げる。

少年はいつもテンポの良い洋楽を聞きながら通学路を歩いて居た。


「(ねみぃ)」

はぁ、と小さく欠伸をして足早に学校へ向かう。
低血圧な体質のためか時々身体を電柱にぶつけてしまうなんて事もしばしば。

この記述ではほぼ一般的な男子高生と思われる彼だが、実はかなり異なる。


奇抜なのはまず外見。

頭部を剃り上げた所には赤いタトゥーを施し、髪型は『モヒカン』スタイルだ。
色白な肌にビリジアンの鋭い瞳は性別をも越えるくらい綺麗なものだ。

だがやはり全てが組み合さると彼に対する第一印象は悪いだろう。

オマケに授業はまともに出席しない、なのに学年で1、2を争う程頭脳明晰。
教師からも生徒からも少なからず反感は買っていた。

それに彼は短気でキレやすい。
喧嘩に発展することも良くある。
身長168と小柄で細身な彼だが、喧嘩は負け知らず。
意外な腕力と有り余る程の頭脳が彼にはある。



そんな彼は陰で『ハイエナ』と称えられる。




「(……あ)」

学校付近の角を曲がった時、彼は非日常を目にした。

登校中の生徒が立ち止まって皆、何かを見ていた。
少しばかり気になったらしく、不動はそろ…とその輪に入って行く。


「風丸ちゃ〜ん」

「だぁかぁらぁ、一緒にサボっちゃおうって言ってるじゃん〜」

「…や……」

「聞こえないってぇ」



「(……んん?)」

あれは……。
佐久間のダチじゃん。

何、馬鹿共に絡まれてるっつー訳?

……しゃあねぇなぁ…。



不動はまだ眠っている足腰を軽く運動させると、塀に手を乗せた。
そして身体を仰け反らせ、勢い良く蹴り出した。

「いでぇっ!?」

「げっ!不動だ!」

見事不良達に命中した。
彼はコキッと首を曲げて面倒くさそうに告げた。

「これ以上ギャラリー共に情けない醜態見せたくねぇなら、さっさと消えろ」

鋭い睨みと共に。


不良達は悔しそうな、何とも言えない表情でその場から去って行った。
一般生徒も見ている上に、悪役は自分達だと理解しているようで不利なポジションと気付いたらしい。


「けっ」

おおー!とか凄ーい!などの歓声を不動は無視して絡まれていた女子に話かける。

「礼は?」

「あっ…!その、あの、あ、あ、ありっ…」

女子生徒は酷く赤面していて、かなり緊張している様だ。

け、と一言不動が漏らし、

「日本語喋れ」

と悪態をついてみた。
女子生徒はすいません、と小声で呟く。



これ以上指摘したらこっちが悪役だ、と不動は再び歩き始めた。

何となく、携帯のボタンを押して音量を上げた。



「(チッ……)」

そんなにオレが怖いかよ。

悪かったな。
助けたのがてめぇの彼氏の円堂クンじゃなくて。
やっぱ、佐久間のダチだからってアイツと同じ訳ねぇよな。

何つー名前だっけなぁ。
あの女。

………?
そういや、あの長ぇ髪…どっかで見た時あるような……。


ま、いいか。


綺麗な女だったけど、興味ねぇしな。
女自体がそもそも、好きじゃない。佐久間以外。





(誤解と異なる気持ちと)
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