疾風少女伝

□回転
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今日は憂鬱だ。
思わずため息が漏れる。

「(はぁ…)」


今日は部活が休み。
別に休みなんか要らないけど、雷門夏未が駄目っていうから。

学校が終わってすぐ帰るなんて信じられない。



「今日何しよ〜かな〜」

「いざ部活が休みになるとすること無ぇよな」


ほら、染岡と半田も暇そう。
確かに身体を休めるのも大事だけど。



SHRが終わって帰ろうとした時木野が教室に入って来た。

「染岡くん、半田くん!」

「木野?どうした?」

「あのね、新しく入部したい人が部室に来ているの!今すぐ来て貰えないかな?」


━━え!?

風丸は決して感付かれないように、その言葉に反応する。

「マジかよ!?」

「行く行く!急ごうぜ染岡!」

「おう!」

3人は言葉の通り急いで教室を後にする。
それを待って居たかのように豪炎寺が教室に入って来た。

そして彼女に近付く。

「風丸……」

「ちょ、豪炎寺!まだ他の奴居るんだから……」

「大丈夫だ。誰もお前の正体なんて気付く訳が無い」

「た、確かにそうだけど……」


豪炎寺となんか一緒に居たら女子に余計嫌われちゃうよ!
コイツモテるんだから!



しかしそんな胸中の思いを彼に言える訳が無い。
彼女は大人しく彼の言葉を聞き入れる。

「新入が来た、って話は耳に入ってたよな?だから部室来いよ」

「ああ。分かった。準備に5分くらいかかるから先に行っててくれよ」

ガタン、と椅子から立ち上がろうとすると豪炎寺が

「いや、待ってる」

なんて言うので思わずコケてしまう。
風丸はよろよろと立ち上がる。


「な、何で?」

「いや…別に。ただ着替える場所が無いんじゃないか?部室にはもう皆行ってるし、屋上も応援部の練習で使えないし」

「……!そ、そうか…。まいったなぁ……」


困った様にカリカリ頬を掻く彼女の手を豪炎寺はいきなり強く掴んだ。

「な、何!?」

「来い」

「わわっ!」

ズリズリと豪炎寺は半ば無理矢理に彼女を何処かへ連れていく。


まだ、教室には人が居た。
勿論、男子も女子も。

学校の隠れたマドンナとイケメン転校生。
この2人が一緒に居て目立たない訳が無い。
むしろ目に付く。

周囲からは決して良い印象を持たれなかっただろう……。






「何よ、あの女……!」

「豪炎寺くんにあんなに媚びて…まさか出来てるの?」

「信じられない…!」


女子の嫉妬は、恐ろしい。















「だからって…ここ?」

風丸が狭くて暗い所でもぞもぞと着替えている。

「他にいいとこ無いだろ…ちゃんと見張っててやるから我慢しろよ」

豪炎寺の低い声が厚い扉の向こうから聞こえてくる。


風丸が着替えている此処は『体育館倉庫』。
確かにそこは各部活の始まりと終わりにしか利用されない。
油断は出来ないものの、中々の好条件な場所だ。



「…っよし!終わった!」


風丸がそう言うと豪炎寺はガラガラとアルミ製の扉を開けた。


「お〜…」

「何だよ?」

「いや、可愛いな、と」




「………はっ!?」

短い沈黙後、ボンッ!と彼女の顔が真っ赤に染まりあがる。
それに対し豪炎寺は涼しげな表情、いや、鉄仮面だ。



「あ、別にさっきの風丸も可愛いぞ」

「はぁっ!?ば、バカじゃないのかお前!」

「そうか?」

「あーっ!!もう!」


コイツ意味分かんない!
コイツも苦手だ!!










とりあえず
豪炎寺と言い合ってても時間の無駄なので部室に向かう。

そこでオレは驚愕することになる。



まさか、まさか。





入部者はオレの思考をはるかに超えた奴だった。

だって見たとき暫く声が出なかった。













「宮坂………!?」

サッカー部の部室には
以前良く見ていた、金髪の女顔の彼。


ビリジアンの瞳が酷く驚いてるオレの様子を映す。




「風丸さん!」










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