疾風少女伝

□破壊
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「なんだよ…これ」

円堂が力無く呟いた。
もっとも、他の部員は声を出すことも出来ないくらい驚きおののいて居たのだが。

優勝旗を持って帰って来たというのに学校は薄暗い。
そもそも学校が無い。


戦争の後みたいにコンクリートや瓦礫や木材がボロボロに積み重なっている。

それが元々何だったのか理解するのに時間は掛からなかった。


そして、1人も生徒は見当たらない。
まだ授業中の筈なのに。



「……!?皆は…っ、学校は……!?」

「落ち着け、音無」

何故か風丸は落ち着いて居る。
彼女には、親しい友人はサッカー部以外に居ないためか、冷えきって居た。
気が動転しているのかも知れないが。

マネージャー達は皆震え、雷門夏未に至っては小さな瓦礫を手に取り、瞳を濡らして居る。


「何が…あったの?」


ポチャン。

彼女の涙が瓦礫の色を変えた時だった。



「!!何か来るっ」

いち早く気付いたのは
風丸。
彼女は瓦礫の山の一番高い所を指差す。
一同はそこに視線を集中させた。


「よく気付いたな。地球人よ」

「「!?」」


瓦礫の中から人が出てきた。
1人だけではない。
2、3、4人。
最終的には11人の人影が確認出来た。

「誰だ、お前等…」

警戒気味に円堂が尋ねると先程喋ったリーダーと思われる少年がサッカーボールを手に取る。

「…黒い、サッカーボール?」

「食らうがいい!弱き人間達よ!」


突然少年は怪しげなボールを蹴り放った。
直感で察することが出来る。

危ない、と。


それでも彼女は逃げることが出来なかった。
頭では判断出来ても身体が反応しなかったために。



「危ない風丸っ!」

「!!」

円堂の叫びで気を取り戻し、避けようとしても既に遅かった。


━━危な…っ!

やっと働いた反射反応で頭だけ庇い風丸は踞る。




ドカン!!


ボールは勢い良く地面に落ちた。
勢い良く、なんてものじゃない。

地面が割れている。
土の地面だというのに。



━━あれ?
オレ、無事だぞ?


「大丈夫か?風丸…」

「風丸さん、お怪我は!?」


「…!豪炎寺、宮坂!!」

2人が動けない風丸を助けたらしかった。
豪炎寺は手に血を流し、宮坂は両足から血が溢れ出ている。

「ぐ……っ!」

「宮坂っ!」

宮坂に至っては立つことさえままならない傷を受けたらしい。


「宮坂、大丈夫か!ごめん、ごめん………!」

苦しそうな宮坂を見ると涙が知らず知らずに流れてくる。



オレのせいで!
オレのせいで!

ごめん宮坂、ごめん!


彼女はこの時だけは今、自分が『男』だと言うことを忘れてきっていた。

ぼたぼた涙が流れる。

鬼道のみぞおち直撃シュートを受けた時も、
皆に究極の選択を強いられた時も、
ゼウスとの試合で傷だらけにされた時も、

皆の前で泣くことなどしなかったのに。


「風丸さん大袈裟です…ちょっと腱を痛めただけで…」

「…っ何なんだよお前等!何でいきなり攻撃してきたんだよ!」

キッ!と大きな瞳で瓦礫の上の少年達を睨む。

少年達は相反して淡々と冷静に質問に答えた。


「我々はエイリア学園」

「エイリア…!?」

「宇宙人、という意味だ円堂…!」

「宇宙人?そんなもの居る訳無いじゃないですか」

目金が冷や汗を垂らしつつ彼等を否定する。
実際は皆口にはしなかったが、そう思っていた。


「へぇ。この跡は我々によるものだとしても言い切れるかい?」

「「………!?」」

「勿論兵器や武器は使って居ない。使用したのはサッカーボールと……我々の脚のみ」

「それを証明するために今レーゼ様がボールを地面に向けて蹴ったんじゃないか」

リーダーの男は、レーゼと茶色の髪の男が呼んで居た。




最早言葉が出ない。
深く割れた地面がそれを物語って居る。



こいつらは、人間じゃない。




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