学パロ♀♂

□佐久間さんの安息
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たすけて、たすけて


涙が頬に滑る。
男たちは近づいてくる。


たすけて、***!!



涙は虚しく床に滴る。
絶望は変わらない。





一人の男が足を掴む。
ゆっくり、ゆっくり手を伸ばして身体を蝕む。


き、きめぇ!

ドカッと自由の効く方の足で反射的に男を蹴った。

元FWの脚。
痛くない筈がない。


どうやらピンポイントに攻撃を受けたらしく、踞ってしまったようだ。



━━そうだ。あたしは助けを求めるタイプじゃない。
あたしは薔薇って言われてるくらいなんだ、トゲはある!



「あたしをナメんな!!」


啖呵を切ると、男達はキレかかって佐久間を殴りかかった。

流石の佐久間でも3人は相手に仕切れなかった。

女と男。
最初からどちらが有利かなんて解っていた。



あっさり捕まった。
口から血を流しながら。


「クソアマ…!もう絶対許さねぇ……!」


ああ、ヤバい。
完全キレてる。

まぁ頑張ったよなあたし。

力及ばず、だね。



どうなるんだろう、あたし……………。

血の出すぎでボヤーッとするなぁ。もういいや。






「佐久間ー、明日休みだしDVD借りてきたから一緒に……………」

バットタイミングで風丸が部屋に足を踏み入れた。


「ひょー♪マドンナ様も遊ぶのかい。ついてるねぇ」


「だ…誰だお前ら…。……!佐久間!佐久間っ!」

血を流した佐久間がぐったりと力無く寝そべっているのが目に入る。


恐怖でいっぱいだった。
でも
自分だけ逃げ出す訳には行かない。

パシャッ

瞬時ケータイのカメラ機能で現場の写真を風丸は撮った。


「なっ…!」

男たちがどよめく。

「下がれ!!!」

深紅と瞳が光をなす。
凄い剣幕で。

思わず後退る彼ら。


その瞬間━━。


ダッ!

佐久間を引き摺って風丸は思い切り走った。


呆気に取られた男たちも
写真に自分の顔が写っていたら大変だ、と急いで追いかけた。







いくら陸上部エースとは言えど手負いの佐久間を抱えてはスピードが出ない。



追い付かれる。

しかし彼女は落ち着いていた。
風丸が走った方向。

それは…………。


「不動ーーーーっ!!」


不動のアパート付近。
佐久間と不動のアパートが近いのを彼女は把握して走ったのだ。




その声は届く。

「なんだ、またストーカーにあったのか…あっ!?」
アパートの2階からヒョイっと降りてきた不動は驚きおののいた。

自分の部活のマネージャーがぐったりと風丸に支えられているのだ。
よく見たら血が出ている。

驚かない訳が無い。



━━アイツラか!!

不動の目が彼女たちの後ろにいる輩を捉え、走り出すと追いかけていた男共は不動の存在を知り、逃げ帰った。


「ちっ…逃がしたか。つーかそれより、佐久間…」

「ぐったりしてて…軽い貧血だと思う。救急車呼…」

風丸の言葉を遮る。
「呼べねぇ」

「え?」

顔を伏せながら不動は

「こんな事が起きて、大会への出場が取り消されたとしたら大変だ」


一瞬怒りを感じたが、直ぐに理解した。不動はいつも言葉が足りない。
素直じゃないのだ。

つまり「佐久間が」と最後に付くんだな、風丸の理解力は早かった。








とりあえず不動の狭いアパートの無骨なベッドに佐久間を寝かせた。


「意外と綺麗だね。男くさいけど」

キョロキョロしている風丸を不動はペシッと叩いた。


「でも…佐久間、一体どうしたんだろう。こんなに怪我して。そもそも誰だったんだろう、アイツら」


先程撮った写真を見ながら風丸は深刻に呟いた。
震えてしまって居たようで写真がぶれたのだ。




不動は質問には答えなかった。賢さ故に予想がついてしまっていたからだ。


人間は、やっぱり信じられねぇもんだ。


不動がため息をつくと、風丸が不動の顔を覗きこみ、

「なぁ…源田、呼ぶ?」

と佐久間の方を見ながら聞いてきた。



あー…と不動が電話をしようとしたら、


「源田には言わないで…」

と佐久間が微かに呟いた。


「あぁ、そっ。一応鬼道ちゃんには言っとくからな。アイツん家なら何とかしてくれるだろうしな」

佐久間は小さく頷いて
また寝てしまった。



「とりあえず明日は部活も無いし、今日は泊まるね!不動が佐久間に変な事しないよーに見張ってなきゃ」

笑いながら風丸が言う。
勝手にしろや…と頭を抱えながら不動が妥協した。





これから起こる修羅場を想像もせずに…








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