学パロ♀♂

□風丸さんの夏休み
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「風丸さーん!スイマセン、遅刻してしまって…」

息を切らしながら宮坂が走ってくる。彼が向かう方向には空色の髪の少女が居る。

「遅刻って程じゃ無いよ」

「いや、男が女を待つ!ってのが普通ですもん!」

「アハハッ、何だソレ」

彼女は笑いながら宮坂を軽く叩いた、


━━アレ?今のは胸キュン台詞なのにな……。
僕、こんなに好きなのに。
風丸さんが。

『男』として見てくれてるのかな…?


宮坂の努力も風丸には伝わらない。
先輩と後輩の壁故か。


いつもの至福タイム。
風丸さんと一緒に登校。
(今は夏休みだから部活に向かうけど)


ふと宮坂の目に
ある物が映った。


「…風丸さん、ソレ……」

「ん?…あぁ、このボタン?付けさせられたの」


風丸のスクールバックに
ぶら下がるクマのマスコットに付いているボタン。

これは男子制服の物。

宮坂にだって意味は分かる。

これは一種の目印。
彼氏居ます、という。



「…誰のですか」

息を、飲んだ。


「エヘへ…豪、炎寺の」


頭に電撃が走った。

豪炎寺!?
あの目付きの悪いサッカー部のエース!?

…そんな………!


「付き合って、るんですか」

不意に出た言葉。

「う、うん…」

照れながら愛しき人が肯定した。



突然
涙が目を潤す。
堪えきれなかった少量が宮坂の頬を伝う。

「宮…坂……?」

心配した表情で彼女は宮坂を見上げる。



何もかも、彼女のために。

風丸さんが見たがっていたからサッカー部の練習を一緒に見た。
風丸さんが楽しそうだから笑って見送った。
風丸さんが困ってたから刃物を持っている奴に立ち向かった。
風丸さんが寂しがって高校での弱音を中3だった僕の元に吐きに来たから僕も猛勉強して同じ高校に入った。

彼女が居たから。

全ては彼女のために!


彼女が好きだから
彼女が僕の全てだから!


彼女に必要とされない自分に何の価値がある。


嗚呼

終わりだ。



「宮坂?どうしたの?」

風丸も泣きそうになりながら宮坂を見上げる。
自分より高くなった、彼を。



「宮坂ぁ……」

反応なくただ涙する宮坂は魂の抜けたようにしか見えなかった。

終わりだ、終わりだ。


ぐるぐる廻る。
頭が世界が人生が。




もう、
終わりならば。






ぎこちなく、宮坂が風丸の方向を向く。



「風丸さん」

「大丈夫か?宮坂」


最後まで、気づいてくれないんだから。
でも、そんな所も。






「大好きでした。ずっと、ずっと………貴女が」


言い終えると宮坂は走り出した。
学校には向かわず。
電車が来て、風丸も乗らないまま立ち呆けた。



「みや、さか」


ツー、と何か温かい物が頬を濡らしていたのも気付かずにただ、立ち尽くしていた。













走り出した少年は
耐えていたものを放出し、泣き叫んだ。

走りながら
ずっと泣きわめいた。



こんなに悲しいのは何故か。
涙が止まらないのは何故か。


理由は1つじゃない。


それは
貴女が幸せそうにしていても、貴女の瞳が何処か辛そうだったから…

でも、もう僕にはどうしようもない、から。





少年は走り続ける。
前も見ずに、ずっと。



さようなら
風丸さん。








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