短編2

□花(ORANGE RANGE)
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「あ……」

僕はふと立ち止まった。
それに隣を歩いて居る染岡くんも気付いてくれたみたい。

「どうした吹雪?」

「なんか…分かんないけど少し此処に居たいんだ」



彼にしては珍しく、CDショップの入り口の前で立ち止まり、そして扉を開けた。
染岡も?を頭に浮かべながら中へ入って行った。

店内には、1つの曲が流れて居る。


花びらのように
散り行く中で


「…………」


この曲は━……
アツヤ?



『行くよ、アツヤ!』

『おう!エターナルブリザードッッ!』


『『イエイッ!』』

幼き頃の自分と、双子の弟がサッカーをしている風景が脳裏に浮かぶ。
懐かしい。

何で、今頃?


夢みたいに君に出逢えたキセキ


『オレはコイツなんか認めねぇかんな!』

『吹雪、お前は雷門のエースストライカーだぜ』


「………!」

或る日の染岡の言葉が耳を横切る。
自分を否定した彼と
受け入れてくれた彼。

吹雪は思わず横目で彼を一瞥したが、どうやら染岡もこのBGMに聞き入って居る様だった。


愛し合って
ケンカして

色んな壁2人で乗り越えて



そっか。
この曲、似てるんだ。

僕、吹雪士郎に。

僕はアツヤが大好きだった。
アツヤも僕が好きだった。

ケンカして、
それでも仲良しで。

染岡くんも同じ。
……いや、少し違う、かな。



僕は
桜の花びらが散るように
呆気なく家族を失った。

でもそれは4月のカレンダーから桜が消えてしまうくらい寂しいもので。

そして桜が散る時に
君に出逢えたんだね。


染岡くん。

今僕の隣には君が居る。
僕は1人ぼっちじゃない。

アツヤが消えてしまうことを恐れて狂う僕じゃない。

君が居てくれているから
たくさんの壁を乗り越られたんだ。


君に出逢えたことは
アツヤがくれた奇跡かな。


生まれ変わっても
あなたの傍で

花になろう



ねえ、アツヤ…
君は僕を見守ってくれてる?




穏やかに流れている曲に集中し身を委ねると、突然何かに包まれた。

「………!」

「大丈夫だ、吹雪。オレが居る」


吹雪を優しく包み込んだのは
染岡の温かくて逞しい腕。
吹雪の瞳からは澄んだ雫が流れ、頬を伝って居た。


━━泣いていたんだ、僕。


なんだか
それを認めたら余計、涙が溢れ出してきた。


「うっ、わあぁああん!!」

ポタポタと、染岡の腕に微かに温かい涙が落ちていく。
暫くそれは止むことは無かった。










彼等から遠く離れた所で、聞き慣れた声がする。

しかし、それは2人に届くことは永遠に無い。


『兄貴、オレはいつもお前を見守ってるからな。安心しろよ!お前は一人じゃないんだぜ。お前にはオレだけじゃない。皆が、染岡が居るだろ!……染岡、兄貴を頼む。士郎…オレは例え何に生まれ変わってもお前の傍にいるからな!


大好きだぜ、兄貴!』










外れた天気予報、
雨が通りかかったのはきっと君が泣いてるのかな?

アツヤも悲しいの?
そうだよね。
僕とアツヤは2人で1つだったんだから。

だから、君も1人じゃ無いんだからね。



大好きだよ
アツヤ。
染岡くん。




花びらのように散っていくこと
この世界で全て受け入れていこう
君が僕に残したモノ『今』という現実の宝物
だから僕は
精一杯生きて

花になろう






━━アツヤ!

生まれ変わっても
僕等は一緒だよ!



君のお陰でイナズマキャラバンに参加出来て、染岡くんと巡り逢えた。

アツヤにもらったキセキ、染岡くんとの出逢い。

大切にしていくからね。





また花びらが散っていく季節に
また君に出逢えるかな。





生まれ変わっても
あなたの傍で

花になろう





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きみのすきなうた
参加小説でした!

初めての染吹!
結構アレだけど許して下さいな!
シリアスもどきになったけど、私初めて吹雪見た時からこの曲がテーマでした!


是非聞いて見て下さい


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