短編小説
□これって?
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下校時間。
人がまばらな廊下で
佐久間と風丸と南雲がガールズトークを広げていた。
「だからぁー、好きな人とか居ないっての!」
「南雲の嘘つき〜」
「ねーっ」
「ムッ…そう言うお前等だって居るのかよ?」
風丸と佐久間はもじもじしながらエヘヘ…、と照れている。
「ちぇっ。何だよ〜!居るならアピールしまくれよ!」
「「ムリムリ!」」
「ダメだなー」
いかにも女子高生な話を繰り広げ、昇降口に出ると、いきなり南雲が、「悪い!」と2人を置いて走って行く。
走った先には
「おっ!凉野!今から帰るのか?乗せてってくれよ」
そう言いいながら赤毛の少女が冷色の髪の少年に近付く。
少年は自転車を引いていた。
「別に構わないが…」
「やーりぃ♪」
ストッ、と自転車の荷物台に座る。
「パンツ見えたぞ…」
「ヘンタイ」
「見たくなんか無い」
「悪かったな!」
他愛もない話をする男女は端から見たら普通の恋人同士のように見える。
「……嘘つきぃ」
笑いながら佐久間と風丸はその光景を見ていた。
校門を出て、自転車を凉野が漕ぎ始める。
「重……ッ!」
軽く笑いながら凉野は呟く。
当然、南雲には聞こえている。
「お前より軽い!」
「どうかなっ」
お日さま園へは結構な距離がある。
だからバスでいつも南雲は帰っているのだ。
「なぁ、何故今日はバスで帰らないんだ?」
「んー…久々にお前と帰りたかったから」
━━ドキッ…。
「あっそ」
正直、一瞬ときめいた。
いつからこんなこと言う奴になったのだろうか。
前までは普通にサッカーをしていて…男みたいな奴だったのに。
スカート。
ボンボンのヘアゴム。
鞄に付いている人形。
睫毛の長い、綺麗な黄色の瞳。
オレにしがみつく、柔らかい身体。
いつからコイツは
こんなに女らしくなったのだろうか。
オレとは、いつから
変わってしまったのだろうか。
もう分からないな。
「と言うか南雲」
「なに」
「胸当たってる」
「なっ!?ばっ!!仕方ないだろ!言うなよ!」
「ハハハッ」
「もー!」
南雲は小さく息を吐く。
━━ったく。
この、鈍感!!
人の気も知らないで…。
チラ、と目を空にやった。
その視線の先には…
「凉野!ちょっと、止まってよ」
キキ……!
自転車のブレーキをかける。
凉野は何だ、と言った表情で南雲を見る。
南雲は空を見ていた。
空はうっすら、
朱に染まっていた。
オレンジ色の太陽が優しく光って、空を照らす。
「綺麗だ……!」
「ん?夕焼けか?」
いつも通ってる道の、只の空だと言うのに、彼女は目を輝かせている。
凉野はじっと彼女を見ていた。
あれ、
コイツ…こんなに可愛かったっけ……?
何だか恥ずかしくなって来たため、彼も目を空に向けた。
「ほー…改めて見ると、綺麗なモノだな」
「あのさ…!」
また、連れて来てくれよ。
不思議と言い出せなかった。
それだけなのに…!
何で恥ずかしいんだ?
あれ?どうしたアタシ!?
口をパクパクさせる。
凉野がクッ、と笑う。
「おい、顔赤いぞ」
「え?はっ!?ゆ、夕焼けでだ!バーカ!」
あああ!
何言ってんだ!!
自分、意味分かんない!
南雲があわあわと
更に顔を真っ赤にする。
凉野が今度は優しく笑って
「また連れて来てやるよ」
と言った。
「お、おう…!」
目を逸らして南雲が返事をする。
凉野もまた、南雲から目を逸らし、赤面していた。
2人は同じ事を思っていた。
あれ……?
何でこんなに
恥ずかしいんだ!?
夕焼けのためか、
何のためか。
耳まで顔を色染めた2人の男女が太陽に映っていた。
「(もしかして…オレ…)」
「(アタシ、凉野を…)」
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リクエストッ…
小豆さんっ…ありがとうっ…ございます……!
何かもう…
土下座させて下さい。
すいません!!
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