短編小説

□夏休み
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*高校生設定







ミーンミーンミーン

ジージージー……


蝉の鳴き声が五月蝿い、
夏休みのよく晴れた日。




そんな中、部屋に籠って不動と風丸が勉強をしていた。

「……暑っち」

「お前ん家にクーラー無いもんな」

パタパタと手で扇ぎながら不動は「うっせ」と答える。


「大体、お前いきなり家に押し掛けて来といて何言ってんだよ」


数時間前、風丸が不動のアパートを訪れた。
その手には大量の課題が収まった鞄を持ちながら。

「だって宿題解んなかったんだ。お前、頭超良いし」


頬をポリ、とかきながら不動は1コンマ開けて

「豪炎寺とか鬼道でも良かったじゃねぇか……」

と言った。
風丸は首を横に振った。


「ダメだよ。鬼道も豪炎寺も昨日の試合で疲れてるから」

「オレもなんだけどよ…」

「不動は、良いの!」

「わっけわかんね」


ポスッと白いソファに不動は座って引き続き風丸の宿題を見始めた。





「ほれ、そこ違う」

びっしり書かれたノートの一角を指でトン、トン、と示す。

「えー?」

「だからなぁ……」

「うん」

風丸はグイッと近付く。
不動の顔まで5センチあるか無いかのくらいに。




━━こ、コイツ…。

無防備なのか、バカなのか…
顔近ぇよ……ったく

………。睫毛、長ぇな。
目がデカイ。

そもそもタンクトップにショーパンで男の家に来んなよ。
オレだってなぁ……




「何じろじろ見てるんだよ」

ハッ、と我に返る。


「見てねぇよバカ」

「あっそ」



そうして2人は宿題を進めていく。不動も嫌々言ってた割には教えてやっていた。



「……フゥ!数学課題終了ー!ありがとな、不動」

ニコッと笑う。
その笑顔に少し、ときめいた。





「…で何。次は?」

「えー…今日はもういいや。頭が疲れちゃった」


立ち上がったと思ったら不動の無骨なベッドにバフッ!と体を埋めた。


「やー…ふわふわぁ……」


不動は呆れて物が言えなかった。
男の部屋に上がり込む事態、相当なことだと言うのにまさかベッドにまで上がるとは。


彼女は抜けているというか、
男らしい性格というか。



「不動…このベッドごと私を家に運んでって…」

「バカかお前」


次は不動が立ち上がって、台所の方へ行った。

小さく独特の閉開音がした。


戻ってきた不動は両手にアイスを持っている。


「アイス……!」

ガバッと風丸が起き上がる。
彼の両手にはカップのバニラアイスとソーダ味の棒アイスがあった。

「どっちだ?」

「バニラ!わーいっ」

「へいへい」


不動もベッドに座って風丸にアイスを渡す。

おいしーっ!と風丸がジタバタしている。
それを不動はアホみてぇ、と笑っていた。




「…うまい?」

「うん!」


そう言うと不動は風丸が持っているアイスを掬ったスプーンをパクッと食べた。

「な、な…な……!」

突然の不意討ちに顔を赤くした風丸にニヤニヤしながら不動は「ごちそーさん」と笑う。

「恥ずかしいだろバカーッ!」


「何、意識しちゃってんの?」

「…うるさいなっ」

プイッと顔を不動から反らし、急スピードでアイスを食べだした。



「(え……マジ?)」

その様子を見て不動は驚いた。
何故なら風丸は円堂と付き合っているハズだから。





暫しの沈黙が襲う。



食べ終えたらしい
風丸が口を開く。


「なぁ、不動ってモテるよな。不良っぽくてワイルドだーっ、て」

「ああ?」

「彼女って居るのか?」

「いや…居ねぇよ。お前は円堂と付き合ってんだろ?」


目を見開いて「ええ!?」と風丸が驚いた。

「アイツは幼なじみだよ!彼氏なんか居るわけないだろ!」



ああ。
コイツ周りからのベクトルに気付いてないのか。

コイツこそもてる。

ただ、周りは高嶺の花だと彼女に近付こうにも、出来ない。

うちの高校のマドンナ様、ってトコロだからな。


「へぇ。意外だな」

「そう?……でも好きな人は居るんだぁ」

フフッと幸せそうに微笑む。
きっと今その人物を思い浮かべているんだろう。





豪炎寺…か鬼道だろうな。
さっきの話的に。

「…オレと今狭い部屋に2人きりなんだけどよ。良いのかよ?」

「不動なら気にしないもん」

「あっそー。じゃ、どっか行くか?正直言うけどよ、オレだって男なんだかんな。女と2人きりはキツいぜ」

「行きたくない…暑いもん」


「あのなぁ……」

瞬間、ポスッと風丸が不動に寄りかかる。
完全に密着状態になった。



「不動と2人で居たいんだ。こうしていたい」


「何…オレのこと好きな訳?」

無表情、いや真面目な顔で風丸を見つめる。

風丸はクスクス笑いながら、

「だーいきらいっ」

と答えた。



呆気に取られたものの、
フッと笑いながら不動も

「オレも」

と言う。












不動は風丸の顔を引いて、風丸もそれを受け入れたように彼の背中に手を回し
キスをした。





カーテン越しに日光が2人を照らした。

影はまだ、重なったままだった。




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リクエスト
「不風でバカップル」


……あれ?
バカップルかコレ…?

むしろ何じゃこりゃ(笑)

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