短編小説

□君をもう一度。
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ザアアアア……



雨が止みそうにも無い、そんな日だった。


高校生くらいの男が携帯にイヤホンを差し、音楽を聴きながら傘を差して歩いていた。

何やらずっと携帯を見続けていた。

待ち受け、だろうか。
1枚の写真をずっと━━。


その男は実に特徴的だ。

頭は左側を刈り上げ、タトゥーを施している。




━━ピチョッ

その男は突然足を止めた。

そして視線を落とす。


「にゃー…」

何とも珍しい色の猫が居た。
否、段ボールに入れてある所、捨てられて居る様だ。



外見からするに、気に止めず無視して行くかと思いきや男はびしょびしょの猫を拾い上げた。


水色に近い色の、捨てられたとは思えない程綺麗な猫。

親近感の沸く、猫。

そんなことも分からないかのように無邪気ににゃーにゃー鳴く。



雨のためか、
男は非常に感傷的だった。


「お前も、1人か?」

悲しそうに微笑む男はそう呟いて、ブルブル震える猫を着ている制服の中に入れ抱え、連れて行った。




誰も居ない、無骨な部屋に猫を離すとそのまま彼は寝てしまった。













チュン…チュン!

雀の鳴き声と同時に何者かが自分の袖を引っ張る。



「(ああ…昨日の猫か)」

そう思って目を開けると…


「おはよう!」

屈託の無い笑顔で不動の目覚めを迎える人物が居た。


「……はぁっ!?」

思わず大声を出した。
当然と言えば当然だが。

「おなか、へった!ご主人さま!ごはん」


ペロペロと不動の頬を舐める。
訳が分からなかった。

拾ったのは猫で、人間の子供じゃない。


恐る恐る聞く。

「お前、誰だ?」

子供はニコニコ笑い、

「やだなぁ、昨日ひろってくれたじゃないですか」

悩殺スマイルで答える。





ちょっと待てよ。

……よく見ればあの珍しい水色の髪をしている。その髪から何やら猫の耳の様な物が生えてる。尻尾も…。


捨てられていた理由が分かった。
こいつ、化け猫か。
あんな綺麗な猫が捨てられてる訳がねぇしな。

しかも無自覚か。


「…お前、何食うんだ?」

「えぇーとね、おさかな?」

「ったよ……」

頭を掻きながら不動は起き上がり、台所へ行く。


「おさかなあります?」

冷蔵庫を漁ってる不動の腕の間からにゅっ、と少年は顔を出す。


「あー…あった、焼くから待ってろ」

「ありがとうございます!」

また、笑う。
耳をピクピクさせながら。




「お前、名前は」

不動が台所で調理しながら横目で少年をみながら言う。

「僕ですか?わかません…」

シュン、と耳を垂れる。



ああ、やっぱり性格は違う。

でも怖いくらいに『彼』に似ている。

写真の彼に。




不動はフッ、と笑って

「じゃあお前の名前は風丸だ」

とおでこをビン!と弾きながら言う。



「かぜまる?…なんだか、なつかしい名前ですね。……あれ?泣いてますか?」




意識も無く、ツー…と一筋の涙が頬を伝っていた。


「ご主人、ご主人」



声も似てる。
猫のクセによ。
オレンジの瞳も空色の髪も。

あいつ、そのもの。






違う、違うんだ
あいつは、『風丸』は死んだ。

オレを残して、
オレを1人にしやがって。

人間は呆気なく死ぬ。
成す術なく周囲は悲しむ。


『ずっと一緒に居ような』

笑顔でそう言うお前は何処へ行ったんだ。

バカ野郎、
バカ野郎。





こんな形で、約束を果たすつもりかよ。

猫になって、化けてまで。

生まれ変わって来たのか。





「風、丸」

「なんですか」

「風っ、丸…」

「はいっ」



不動は健気に自分に応える猫少年の頭をクシャクシャ撫でた。




「(分かったよ。風丸)」



ぎゅうっと猫少年を抱き締めた。




オレは君を、君の生まれ変わりの君を。

守り続けると誓おう。


今度こそ。

ずっと一緒だ。






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あれ…死ネタになった←

すいません!

リクエストでした★
「不風の獸化」…で!


はいっ

小さいことは気にしない!

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