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□幻
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10月31日ハロウィン。
それは死者が彷徨い歩き、人々を惑わす日。
だが、封建的男塾にあってハロウィンなど全く関係のない話だった。
昨日までは……
「ハロウィンだぁ?」
天動宮の執務室に卍丸の不機嫌なな声が上がる。
今年の愕怨祭も終わり、過ごしやすくなった日々を平和に過ごしていた塾生達だったが、こうなると悪戯の虫が騒ぎ出す困った人物が一人……
「あぁ……塾 長 命 令 だ……」
集められた他死天王三人を前に、影慶は眉を顰め溜息をつく。
今朝方、塾長から届いた文書にはこうあった。
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来る10月31日。西洋的百鬼夜行
“覇露因”を執り行うべく一号生を
三号生の元へ派遣する。
一号生は来るべき日までに万全の
準備を。
また三号生については、追って沙汰が
あるまで待機されたし。
男塾塾長 江田島 平八
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「……それで、邪鬼様は何と?」
手にした書面に目を通し、ソレを隣に佇む羅刹に渡すとセンクウは影慶に問いかける。
「邪鬼様は…ほおっておけと、止めても無駄なのは承知しているので好きにさせればよい……と」
眉間に寄せた皺を更に深く刻み、影慶は諦めたように言い放つ。
以前の七夕やアンケート調査といい……
塾長に何か吹き込んでいる人物でも居るのではないかと疑問を抱く死天王だが、如何せん今はそれを追及する術はない。
「しかし、一体一号共に何をさせる気なのか…まさかパーティーでも開けと?」
書面を読み終えた羅刹もまた眉間に深く皺を刻み書面を卍丸へと回すが……
「アレだろ?“はろうぃん”ってのは仮装した奴がお菓子を求めてそこいらの家を恐喝して回る遊びだろ?」
『いや、少し違う……』
ソレに目も通さず自信満々にハロウィンを語る卍丸だったが、仲間のハモった声にムッとして口をつぐんでしまう……
「とにかくだ…後ほど何か指示があるだろうから、それまで各自共自重しててくれ」
より一層深い影慶の溜息と共に第一回覇露因会議は幕を閉じ……悪夢の宴は約束されたのだった。