うた
□おはなし
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おはなし
戦争が終わり、地球から人類が絶滅したはずの
―世界に
存在するのは
目の見えない少女と耳の聴こえない少年だけ。
少女は歌が得意だった。
少年は絵が上手だった。
少年は少女が大好き
だけど、少女は少年を知らない。
だってもう、忘れてしまったから
鉄の屑と、放射能、人の骨が入り乱れたそんな世界。それに似合わず可憐に咲く草花。
少年と少女が思う事は、いつも同じだった。
はやく、死にたい。
今日も何も知らない少女は、死への願望を持ちながら、大好きだった歌を歌う。
少年は、今日、心臓に杭を刺した。
これは、小瓶の中だけのお話
小瓶の蓋を開けると
歌が聴こえる
少年に膝枕をしながら、笑顔で少女は歌っていた。