Original Story

□素直になれない
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「…や、ばッ!!」

足がもつれ、身体が宙に投げ出されたと思った時には既に身体が床に激突していた。痛みに顔をしかめていると後ろから無数の足音、頭上からは笑い声が聞こえてくる。

急いで立ち上がろうとしたが、上から何かがのしかかってきて、立ち上がれない。背中にかかる重圧に耐え切れず背骨がミシッと嫌な音をたて始める。それと同時に息がしにくくなってきた。

諦めずに身体に力を入れるが、立ち上がるまではいかない。それでも、懸命に身体を動かし立ち上がろうとする。

あと、数歩。数歩でヒキコさんの手が届いてしまう。霊感があるから霊には慣れているが、それでも恐ろしいことには変わりない。手が、足が、震える。

「だ…だれ、か…ッ!!」

ヒキコさんが手を伸ばし足首を掴もうとした。瞬間。

「走れ!!」

誰かに手首を強く引かれ、勢いのまま立ち、足を動かし始める。立った拍子に背中にあった圧迫感が消え、酸素が一気に肺に入ってきて、思わず咳込む。それでも足は止めず動かし続ける。

危機から脱出したはよかった。だが、背後にある気配は未だに消えていない。それどころかますます酷くなっている。
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